捨てられたゴールデンレトリーバーが産んだのは、仔牛に見えた?
2017年も終わりころ、犬好きの夫婦は、ロージーという名のゴールデンレトリーバーの雑種犬の世話を引き受けた。この時すでにロージーは妊娠していた。この犬の世話を引き受けた夫婦は、ふわふわの仔犬たちが生まれてくるものだと思っていた。ところが、そこに生まれてきたのは…牛?!少なくとも、牛のような見た目だった。
この牛のような、一見変わった毛並みの仔犬たちは、インターネットで紹介されるや否や、世間をにぎわせた。どうやって、ゴールデンのロージーから牛のような仔犬たちが生まれたのだろう。そして、この仔犬たちはその後、どうなったのだろうか。ロージーと予想外の仔犬たちの心温まる物語をご紹介しよう。
ロージー、可愛くて、混乱している母犬
2017年10月、ゴールデンレトリーバーの雑種犬であるロージーは、飼い主に捨てられた。シェルターに連れて行かれたロージーは、明らかにお腹が大きく、出産間近な様子が見てとれた。シェルターの管理者は、シェルターでは、ロージーの出産を適切にサポートしてやれないのではないかと心配していた。
シェルターでの安楽死率は、かつてと比べると、激減している。とはいえ、多くのシェルターでは規定数よりも多くの犬が保護されているため、生まれてくる仔犬を世話する余裕などないのが実情だ。ロージーには、すぐにでも、思いやりのある飼い主が必要だった。
救世主、登場
シェルターの管理者は、ニュースリバー・ゴールデンレトリーバー・レスキュー(ノースカロライナ州のローリーにあり、保護犬と新しい飼い主をマッチングする組織)に連絡した。ロージーが落ち着いた場所で出産を迎えられるよう、里親を早く見つけなければならない。
ニュースリバーは主に、ゴールデンレトリーバーの救助やリハビリを専門とする組織だ。ここのボランティアらは、野良犬や捨て犬が元気になって、新しい飼い主に引き渡せるようになるまでの間、世話をする。幸いにも、ニュースリバーの会員の中に、ロージーの世話を引き受けてくれそうな夫婦を知っている人がいた。
救助の手は、すぐそこに!
ニュースリバーのボランティアスタッフは、シェルターから連絡があった翌日、すぐにロージーを引き取った。この時点で、すでにロージーのお腹は大きく、スタッフは、ローリーにある動物診療所まで向かう車中で、出産が始まってしまうのではないかと心配した。
診療所ではすぐに健康診断が行われ、母体は健康であることが分かった。そこで、スタッフらが次にしなければならないことは、ロージーの出産をサポートできる里親を探すことだった。
ジョンとケイティ、救いの手を差し伸べる
ケイティとジョン・ブラック夫妻は、3匹の犬(それぞれ名前はアニー、レロイ、ウィンチェスター)を飼っているが、2009年以降、里親として20匹以上の犬の面倒を見てきた。そのためボランティアスタッフは、ジョンとケイティには、ロージーと生まれてくる仔犬の面倒を見るための知識や経験があることを知っていた。
この夫婦は数年間にわたり、ニュースリバーの犬たちの面倒を見てきた。そして、ロージーも喜んで引き受けてくれたのだ。ジョンとケイティがロージーを連れて帰ったのは、2017年10月28日、これはロージーがシェルターに連れてこられてから、わずか5日後のことだった。
ロージーはうまく環境になじんでいった
ブラック夫妻のもとにロージーが引き渡されたのは、シェルターに連れてこられてから、わずか5日後のことだった。「新しく里親を引き受けた、ロージーです」とインスタグラムでブラック夫妻は投稿した。「この子は妊娠しており、まもなく出産予定です。」
夫妻は、ロージーは人見知りでおどおどしているが、それ以外は、とても優しい犬だと語っている。そして、いよいよロージーの出産のとき、ケイティとジョンは、無事に仔犬たちが産まれてくることができるよう手伝った。4匹の健康な仔犬を産むのに立ち会った夫妻は、その後インターネットで話題を席巻する、驚きに出くすのだった。
ロージーの出産
ジョンとケイティは、ロージーの出産を手助けした。難産ではあったものの、母犬も仔犬らもすべて無事だった。少なくとも、ロージーはゴールデンレトリーバーの雑種だろうと思われていたため、仔犬らはすべて、ゴールデンレトリーバーの犬種からしても、平均的なサイズと体重だった。
ロージーがゴールデンレトリーバーの雑種であれば、大型犬と見なされるため、夫妻は、仔犬らも比較的大きいのではないかと思っていた。平均して、犬は5匹から6匹の仔犬を産むが、ロージーの仔犬は4匹だった。しかし、ブラック夫妻を驚かせたのは、仔犬の数だけではなかった。
「予想していた仔犬とは、まったく違うものでした」
「私たちが里親をしているゴールデンレトリーバーの雑種が、昨日仔犬を産みました。」とケイティは投稿した。「仔牛みたい。」4匹の仔犬は、まるで母犬に似ていなかった。なぜなら、4匹とも黒い斑点があったのだ。父犬の犬種については何も分からなかったが、ゴールデンレトリーバーではないことだけは明らかだった。
ブラック夫妻は、仔犬にそれぞれ、デイジー、クララベル、ベッツィー、ムーと名付けた。ロージーと仔犬らの写真を見た人々は、驚き、そして笑った。それはネット上の人々だけでなく、ブラック夫妻の家族さえも同じ反応だった。「私の父も写真を見てしばらく笑っていました。」2017年11月、ケイティは新聞協会のインタビューにこう答えている。
仔牛のような仔犬らの父犬は…
白い毛並みに黒い斑のある犬種も様々だ。そのため、父犬がどの犬種なのかを特定することは難しい。ロージーのように、父犬も雑種であった可能性も否めない。しかし、だからといって、ネットユーザーの予想が止まるわけでもなかった。仔犬らの父犬は何犬だったのだろうか。
予想に挙げられたのは、ダルメシアン、イングリッシュセッター、ブルーティック・クーンハウンド、ヴェッターフーンなど。しかしながら、本当の意味で「ブチ」があるのは、ダルメシアンのみだ。他の犬種の毛並みは、小さい斑点があちこちにあり、どちらかというと「まだら」模様だ。やはり、可能性として高いのは、ダルメシアンだろうか。
ロージーの仔牛ちゃんたち
ケイティの父親は、ロージーと仔犬らとのミスマッチがすごく気に入って、ケイティにインターネットに投稿するように勧めたと言う。ケイティの父は、インターネット上で話題になるんじゃないかと冗談を言い、それを受けたケイティは、レディットに写真を投稿することにした。父は正しかった。ロージーの写真は、瞬く間に世の中を席巻したのだ。
この写真を見ると、レディットユーザーと同じくらい、ロージー自身も困惑しているように見える。この写真は9万以上の賛成票が投じられ、仔犬の行先について1600件のコメントが寄せられた。その後、ブラック夫妻がインスタグラムに投稿すると、その反応は倍増した。
父親似の仔犬たち
ネスト(遺伝子の働きを研究する政府プロジェクト)によると、仔犬は両親がどの遺伝子を持っているかによって、特定の形質を遺伝するという。オーストラリアンシェパード健康遺伝学研究所は、「顕性遺伝子は必ず潜在遺伝子に勝る」と言う。そして、この顕性遺伝子によって、犬の外見が決まる。
つまり、ロージーは潜在遺伝子を、父犬が顕性遺伝子を持っていたということになる。そして、たまたま、ロージーの仔犬らは、父犬の身体的特徴を受け継いだのだ。説明がついたところで、依然として、このミスマッチぶりが面白いことには変わりない。
インターネットユーザーらは大いに楽しんでいる
レディットユーザーらは、牛のような仔犬と、驚いた様子のゴールデンレトリーバーの母犬に注目した。ユーザーらは、こぞってロージーの表情を読み取ろうとした。あるユーザーからは「(母犬とは似ていないから)仔犬は雑種だと思う」といった冗談まで飛び出した。
ロージーが仔犬らを守ろうとしているようだと言うユーザーもいた。ロージーの表情は「だから何?この外見がそんなに大ごとなの?そんなに狭量なの?カレン、本当に?」と言っているようだというユーザーもいた。
ケイティは自己弁護をしなければならなかった
好意的な意見の他にも、ケイティとジョンが、里親として預かっていた犬同士を、意図的にかけ合わせたのではないかと疑うユーザーもいた。ケイティは、ロージーを引き受けたときには既に妊娠していたことをハッキリと伝えた。「ロージーに中絶手術をさせようなんて思いませんでした。ただ、できる時期がくれば、避妊手術を受けさせようとは思います。」とコメントしている。
ジョンとケイティには、既に3匹もシェルターから引き取って飼っている犬がいるため、時期がくれば、ロージーと仔犬らの飼い主を探そうと考えていた。新しい飼い主が見つかるまで長くはかからなかったものの、少しばかりやる事があった。
ロージー、体調不良
ロージーは、出産こそ無事に終えたものの、体調はすぐれないようだった。産後、ロージーが感染症にかかっていることに気づいたブラック夫妻は、ロージーを動物病院に連れて行った。そこで、ロージーは数週間にわたって、抗生剤を投与することになった。
どうやらロージーは、難産の後によく起こる「子宮筋層炎」にかかっているようだった。そのため、ロージーの母乳の出は悪く、仔犬らに十分与えてやれなかった。だが幸いにも、ロージーにはケイティとジョンがいた。
ケイティとジョン、ロージーが回復するまでサポートする
ロージーが回復するまで、ブラック夫妻は、仔犬らにミルクを与えてやった。仔犬らはそれぞれとても可愛かったが、特に抱っこしてやっている時は、特段に可愛かった。ジョンとケイティは、ロージーや仔犬を飼ってやることができないと分かっていても、あたかも自分達の飼い犬であるかのように、大事に世話をした。
幸い、ほどなくしてロージーは快方に向かった。その後、仔犬らにも母乳を飲ませられるようになり、元気で幸せな母犬になった。そして、仔犬らもすくすくと育っていったのだ。
ロージー、良き母に
ソーシャルメディアでロージーと仔犬らの写真を見た人々が、その奇妙なミスマッチについて考えを巡らせる一方で、ロージーはそんなことなど、まったく気にも留めていないようだった。仔犬らを守ろうと、数週間の間は、べったりと寄り添っていた。そして、その甲斐あって、ムー、ベッツィー、デイジー、クララベルは健やかに大きくなっていった。
「ロージーは、誇らしげでした。」とケイティは記している。インスタグラムによると、仔犬らがどこに行こうとも、ロー時は、常に付き添っているようだった。ケイティがシーツを交換するために、仔犬らを大きな洗濯かごに移したときでさえ、ロージーはぴょんと、その中に入るのだった。
結局のところ、さほど珍しくはない
イギリスで人気のペット無料情報サイトであるPets4Homesによると、親兄弟とはまったく見た目の異なる仔犬が生まれてくるのは、特に雑種犬においては、よくあることだそうだ。「血統書のない犬であれば…同じ親を持つ兄弟間でも、色など、身体的特徴が大きく異なる場合があります。」
フォロワーたちの興味を引いたのは、ロージーの仔犬はすべて牛のようで、どの仔犬もはじめは、犬のようには見えなかったということだろう。しかし、大きくなるにつれて、段々と犬っぽい形にはなってきた。
仔犬らがすっかり安心しきっているところ
ケイティとジョンは、仔犬らの面倒をよく見たし、ロージーとその仔犬のファンらに最新情報も発信し続けた。頻繁にインスタグラムに写真をあげ、仔牛のような仔犬らの成長ぶりをフォロワーに伝えたのだ。
仔犬らは常にロージーの周りを離れず、眠るときはロージーの手足に重ねて眠った。ブラック夫妻は、クララベルが幼い頃から元気で、やんちゃな性格が表立っていることを、ソーシャルメディアで伝えていた。小さな仔牛たちも成長するにつれ、その個性も徐々に表れてきた。
仔牛ら、数週間のうちに大きくなる
2017年12月の初めには、仔犬らは生まれてから数週間経っていた。その頃には、仔犬らそれぞれの性格は、はっきりと表れていた。12月6日、ケイティはインスタグラムに仔犬らの写真を投稿した。
「デイジーは、優しいけれど少し心配症で引っ込み思案なところがあります。クララベルは、陽気で恐れ知らずの癇癪もちです。ムーは、抱っこが好きな甘えん坊で、注意を自分に向けたいときに鳴きます。ベッツィーは、優しくて穏やかな子です。引き取りたいくらい!」
仔犬ら、お別れのとき
2018年1月の第1週目までに、2組の家族がそれぞれベッツィーとクララベルを引き取って言った。ブラック夫妻は、仔犬らとの別れを悲しんだものの、それぞれが新しい飼い主から愛情をたっぷりとそそがれ、世話をしてもらえるのだから、と考えるようにした。
デイジーにも引き取り先が見つかった。そして、引き取られた先での名前は、リリーとなた。後に、ムーにも新しい家族が見つかり、新たにバークリーという名前がついた。ムーが引き取られた先には、他にもマックス、モー、アビーという犬がおり、飼い主は、それぞれにインスタグラムのアカウントを作っていた。
ロージー、仔犬らとお別れ
ロージーにも新しい家族が見つかった。ジョンとケイティは、ロージーとの別れを悲しんだ。だが、ロージーを二度と捨てたりはしない、新しい家族が見つかったのだ。長い目でみれば、これがロージーにとっては最善だということは、誰の目にも明らかだった。
ロージーの体調が回復すると、ジョンとケイティは、避妊手術を受けさせた。ロージーはもう仔犬を産むことはできないし、再び仔犬らに会えることもないかもしれない。だが、ロージーを含め、仔犬らは皆、温かい家庭に引き取られたのだ。
テキサス州ファルシャーの夫婦が、ハリケーン・ハービーで遭遇したもの
2017年8月、ハリケーン・ハービー(テキサス州を襲った大型のハリケーン)がルイジアナ、ベリーズ、ニカラグア、テキサスなど多くの地域を襲い、壊滅的な被害をもたらした。街中の道路、田舎の牧場は冠水し、タミー・カントンや彼女の夫など、これらの地域に住む人々は窮地に陥った。
カントンと夫は、この地域に住むその他数千人の人達同様、この災害からどうやって逃れられるかを考えなければならなかった。しかしながら、彼らには、ハリケーンに加え、他の人達とは少し異なる状況に直面していたのだ。
カントンら、家をシェルターとして開放する
カントン夫妻は、2組の家族と8匹の犬を救うため、家を避難所として開放した。この大人数が、一度に家にやってくることを想像してみよう。いくら開放したと言っても、日常生活が全く異なる物になるのは、明らかである。テキサス州のファルシャーのある一家では、大人数が押し寄せたことで、狭くなったスペースで、それぞれがどうにか持ちこたえていた。
そんなときだった、突然、タミーの夫が何かを目撃したのだ。その結果、すでに狭かったスペースがさらに狭くなることになったのだ。彼は何を見たのだろうか。ハリケーンの最中に、何が起こるかなんて、誰も予想がつかない。さぁ、あなたもこの衝撃に、準備と覚悟はできているだろうか。
シェルター、予想外のものを受け入れる
こんな状況で、予想だにしないこととは一体どんなことだろうか。それは、ハリケーンが過ぎ去った直後に、牧場で仔牛が生まれたことだったのだ。
「主人は、仔牛が水の中に立っており、母牛が周りにいないことに気づいたのです。」とタミーは説明した。たいてい、出産直後に母牛は仔牛に授乳を行い、そばにいる。つまり、仔牛のそばに母牛がいないということは、それだけで危険信号なのである。これは、何かが起こったに違いない。
衰弱している仔牛
タミーは続けて説明した。「水はすごく冷たく、牧草地には大量の水が染みこんでいました。」雨の中に佇む野良犬は、見たことがあるだろうか。その犬を10倍した状況で、この可哀想な仔牛の状況を想像していただきたい。
さらに、タミーは仔牛が”衰弱して、冷たい雨の中、寒さで震えている”ことに気づく。この状況を見た夫婦ができることとは、一体何だろうか。ただ一つ確かなのは、この小さな動物を寒い中、見捨てることなど、到底できないということだった。
早く何とかしないと...
動物の赤ちゃんは、自力では長くは生きられない。これは、事実なのだ。天候も悪く、状況はさらに悪化していた。そのため、助けがなければ、この仔牛に残されている時間もほんのわずかだろう。手をこまねいている時間などない。
タミーは状況を把握し、すぐにでも何とかしなければならないと思った。すでに彼女の家は、人と犬でいっぱいだったが、仔牛のために、再び勇気ある決断を下すのだった。
今、助けに行くよ
良きサマリア人(聖書に出てくる、苦しむ人々を助ける情け深い人)のように、タミーと夫は、勇気を出して冠水した牧場に出て、仔牛のいるところまで向かった。こんなことを、この状況でできる強い人が、世の中にどのくらいいるだろうか。
タミーがやっと仔牛のいるところにたどり着いたとき、状況が酷いことが見てとれた。仔牛はすでに衰弱しており、寒さにひどく震え、立っているのもままならないほどだったのだ。「もう助けてやることができないのではないかと思いました。」とタミーは語っている。
名前はハーヴェイ
タミーと家族は、この仔牛にハーヴェイと名前を付けた。生まれたばかりであるため、こうした悪天候にも闘える免疫システムでさえ、まだできていなかった。母牛もおらず、状況は困難を極めていた。
こうした理由から、獣医はハーヴェイが回復するまで、家の中に入れておくようにタミーに伝えた。ハーヴェイにはスペースが必要だったため、タミーはハーヴェイを洗濯室に置いておくことにした。
回復までの道
ハーヴェイの救助から数週間が過ぎ、仔牛の状況も徐々に良い方へと向かっていた。この間、仔牛は犬用のベッドに寝かされ、哺乳瓶でミルクを飲んでいた。
日が経つにつれ、ハーヴェイは徐々に力を取り戻していくようだった。そのため、タミーら家族は、じきに牧場へと出られるようになることを望んでいた。驚くべきことに、ハーヴェイは回復までの間に、予想外の動物と仲良くなっていたのだ。
犬との友情
大方の予想に反して、ピットブルはエネルギーの塊だ。ある晩、シーリーという名の犬がハーヴェイの体をなめ始めた。するとすぐに、仔牛が嬉しそうに反応したのだ。
「犬達はすぐに仔牛が気に入ったようでした。」とタミーは語った。これから始まる、特別で予想外の出来事を、誰が予想できただろうか。ハーヴェイと家族の間に、何が起こったのだろうか…。
新しい友情
まさにこの写真のように、タミーらは、美しい友情が花開く様子を目撃する。まるで絵本から抜け出したかのように。ハーヴェイは、試練を乗り越えて回復し始め、新しい環境に馴染み始めたのだ。
ハーヴェイは、新しい友達の行動を真似し始めた。毎日毎晩、犬らと行動を共にすることで、ハーヴェイは、犬のようになっていったのだ。こんな状況を誰が予想できただろうか。
動物界の友情
幸運にも、仔牛と犬たちはお互いに、その友情を発展させていったということだ。これは、まさに制作中のディズニーの物語であるかのようだ。ピットブルが苦もなく仔牛と結びつきを強めるなどと、誰が想像できただろう。
「シーリーは、ハーヴェイと遊んだり、毛づくろいしてやったりするのが大好きです。赤ちゃんのハーヴェイを守っているんです。この2頭の間には、特別な絆があるんです。」タミーは、フェイスブックでこう述べている。この関係を表せる言葉があるとすれば、それは「特別」という言葉だけだろう。タミーは、この2頭の関係を楽しんでいた。
特別な部屋
ご存知のように、一般家庭では、室内で牛を飼えるようにはできていない。ピットブルと仲の良いこの仔牛は、すでに400ポンド(180kg)以上に成長していた。タミーの手に負えなくなることは時間の問題である。タミーは、何か対処法を考えなければならなかった。
ハーヴェイは、あまりにも大きくなったため、洗濯室にはおさまりきらなくなっていた。結果、新たに寝る場所が必要となった。次にハーヴェイのために、タミーと夫が行ったことは何だろうか。
牛であることの問題
一度動物が室内に長く住み着いてしまうと、起こることは1つだ。室内に慣れた動物は、居心地の良さに慣れ、決して外に出たがらない。まさに、ハーヴェイの場合もそうだった。
暫くすると、ハーヴェイは、他の6頭の牛と共に、牧草を食べることさえしなくなった。タミーや彼女の夫が、いくらハーヴェイを家畜小屋まで連れて行っても、そのうち勝手口の方に戻り、中に入れてくれ、とモーモー言うのだ。
牛用コンドへようこそ
タミーと夫がしたことは、愛情深い飼い主なら、誰もがしたことだろう。ハーヴェイの幸せをあまり損なうことなく、寝場所を確保する方法を思いついたのだ。そして、その結果、いわゆる「牛用コンド」を作った。
タミーらは裏庭の納屋を使い、ハーヴェイだけの家を作り、なんと、ハーヴェイ専用のスペースヒーターを設置したのだ。こうして、ハーヴェイは、納屋と家とを行き来する生活を送るようになった。
新しい場所が好きではない様子
タミーがハーヴェイ専用のスペースを作ったにも関わらず、ハーヴェイには不満だった。最初の日こそコンドで寝たものの、その後、ハーヴェイは家のドアのそばで寝始めた。
どうしてコンドの中にいたくないのだろうか。ハーヴェイは、あまり自分のコンドに行かず、犬や家族と遊ぶ方がいいようだった。犬や家族と離れて暮らすことは、ハーヴェイには向いていないようだ。
徐々に状況が変わる…
さらに時が過ぎ、ハーヴェイは他の牛同様、もっと大きくなった。徐々に、ハーヴェイの周りの友達にとって、ハーヴェイ自身が危険になりはじめたのだ。
かつて、ハーヴェイは誰も見ていなくても、他の動物や人と遊ぶことができたが、じきに見張り役が必要となった。あまりの重さのせいで、犬達と大騒ぎして興奮しすぎると、犬に害を及ぼすこともありえたのだ。犬との友情が崩れるところなど、誰も見たくない。
牛に戻す方法
物語をここまで読んだ読者にはお分かりのように、ハーヴェイは、通常の牛のように育てられていない。このため、タミーはハーヴェイを通常の牛に戻すため、自分で何とかしなければならなかった。
タミーは対処法として、異なる段階をいくつも用意していたが、必ずハーヴェイを納屋に連れて行くことにしていた。こうして納屋に連れて行くことで、良くも、悪くも改善がみられた。タミーの努力が水の泡にならずに済んだのである。
牛になるまで
「私たちは、ゆっくりと進めていきました。」とタミーは語った。「ハーヴェイは、外に出すことでさえ、難しくなっていました。「牛」のようになるには、他の牛らと時間を過ごさせなければなりません。」
これは、まるで室内犬を、外で飼おうと訓練するパターンのようだ。ただ一つ言えるのは、これは人間と犬、両方にとって思ったよりも簡単なことではないという点である。さらに、動物がその動物たる概念(つまり、牛らしさ)を理解するのに時間がかかる場合が多いのだ。しかし、ハーヴェイの場合、他の牛が外にいるのを見ていたことが、少しは役に立ったようだ。
ずる賢いハーヴェイ
ずる賢いペットを飼ったことはないだろうか。もしくは、そんなペットのことを聞いたことはないだろうか。ここでいう、ずる賢いとは、1人でこっそりとドアを開けるワザを身につけることを指している。ハーヴェイは、自身で勝手口のドアを開けて、こっそり家の中に入るワザを身につけたのだ。
ハーヴェイは、牛でいることに飽き飽きしたときにはいつも、家の中に入ってくつろぐのだった。しかし、そこにはタミーが設けたルールがあった。「ハーヴェイに自由に家の中を歩き回らせたりはしませんでした。」「ちょっと家に入って、友達である犬達に挨拶するだけにさせました。」
幸せなハーヴェイ
そう。ハーヴェイは、牛の生活に慣れるために、身についた犬の習慣を捨てなければならなかった。しかし、タミーは時折、ハーヴェイを家に入れて、甘やかしてしまうのだった。時には、犬用のおやつをハーヴェイにあげたりすることも。
タミーは自身の気持ちについて、こう説明している。「ハーヴェイとこんなにも密に、一緒に時間を過ごせるとは思ってもみませんでした。とても満たされた気持ちです。ハーヴェイは、たまに甘えて、頭を私の膝の上にのせて休むこともあるんです。」ハリケーンがもたらした奇跡が、こんな温かい物語の展開を生み出すと、誰が想像できただろうか。