フロリダの住宅の軒下に、約5メートルもの猛獣が見つかる?
2019年に、フロリダ州南部にある水道局に一本の電話が入りました。それによると、ある住民が、約5メートルはある生き物が家の軒下にいると通報してきたのです。その通報を確認すると、当局は、すぐに地元の野生動物の保護に取り掛かりました。
一体どんな生物で、フロリダの湿地帯にどう影響するのか?この猛獣に、州管理局が、どう対処するのか読んでみましょう。
フロリダの湿地帯では、稀な通報
2019年の7月に、フロリダ州の南部にある水道局のロン・ベルジェロンさんのもとに、フロリダの湿地帯から一本の電話がかかってきました。ある住宅の軒下で、約5メートルはある猛獣が徘徊しているということだったのです。
最悪なことに、その猛獣は、体重が70キロ以上もあり、フロリダの野生生物生息地域で脅威となるのは必至でした。一体どんな猛獣で、どうやってそこに生息することになったのでしょうか?
悪名高いアリゲーター通りだった
その家は、ブロワード群にあるアリゲーター通りから、6キロほど離れたところにあり、その名の通り、フロリダ州に生息する2種類のアリゲーターが、たくさん生息していたのです。
でも、高速75号線沿いの130キロ付近には、アリゲーター以外の猛獣も生多く息していて、フロリダ州は、野生動物の宝庫なのです。
アリゲーターではないはず
多くの人が、その家の軒下にアリゲーターがいたと思ったにちがいありません。でも、それはアリゲーターではなかったと推定できます。だって、アリゲーターは、3メートル以上大きくなることはないからです。
フロリダで確認された一番大きなアリゲーターでさえ、4-メートル弱なのですから。しかも、アリゲーターは、フロリダの湿地帯の野生動物と共存していて、食物連鎖の一部なのです。
湿地帯では、アリゲーターだけが、捕食者ではないのです
フロリダでは、アリゲーターの数が多いことから、アリゲーターだけに注目が行きがちですが、湿地帯には、他にも捕食者がいます。その中でも、数は少ないですが、フロリダパンサーがいます。
このパンサーは、絶滅危惧種に指定されていて、州の保護下にあります。その凶悪な見た目にも関わらず、人を襲ったという記録は残っていません。でも、この生物が軒下にいたものではないようです。
湿地帯には、ツキノワグマも徘徊しています。
また、フロリダには、大型捕食者であるツキノワグマも生息しています。このツキノワグマも絶滅危惧種に指定されていて、体重は、110キロから160キロほどになりますが、湿地帯付近には生息していません。
ツキノワグマは、通常森を徘徊し、雑食性で、ベリー、魚や昆虫などを摂取して、食物連鎖を乱すことはありません。
大型生物で、フロリダ在来種なのは、マナティーだけです
報告された大きさと同じ長さで、在来種であるのは、マナティーしかいません。この水性哺乳動物であるマナティーは、4メートルを超え、フロリダの湿地帯を泳いでいます。
でも、マナティーは、菜食動物で、水草や雑草、コケなどを主食としています。家の軒先で見つかった動物は、肉食であるということでした。
この生物は、もともとフロリダに生息していたものではない
この生物は、実際は、フロリダでもともと生息していた生物ではなく、在来種やフロリダの環境自体を脅かす外来種だったのです。
この生物は、多くの生物を捕食し、食物連鎖に大きく影響を及ぼします。ベルジェロンのもとに報告が入ってきてから、すぐに対応策が練られました。
ベルジェロンのチームの予想をはるかに超えるもでした
電話をかけてきたのは、湿地帯の近くのキャンプ場に滞在していた男性二人からのもので、話によると、その生物は、ポーチの下で目撃されたようです。
ベルジェロンは、同僚のブライアン・ヴァン・ランディングハムと、フランク・ブランカとともに、その生物の捕獲へ向かいました。ところが、それは、全く予期せぬものだったのです。
その生物は、5メートルを超えるニシキヘビでした
チームが、現場に到着すると、住宅のポーチの下にビルマニシキヘビが横たわっていたのです。このビルマニシキヘビは、世界でも一番大きな蛇の一種で、平均体長は、なんと4メートルほどなのです。
この捕獲されたニシキヘビは、体長なんと5メートルもあり、フロリダ州の最長記録のたった30センチ短かっただけなのです。
しかも50以上ものニシキヘビの赤ちゃんも
通常ニシキヘビは、人に危害を加えたことは少ないのですが、このニシキヘビは少し攻撃的でした。なぜなら、このニシキヘビ、50個以上もの卵を抱えた母親蛇だったからです。
ニシキヘビは、平均一回の繁殖で、50から100個の卵を産卵し、繁殖率がとても早く、生態系をすぐに変えてしまうのです。
チームが到着したと同時に、羽化が始まっていた
チームが到着してときには、ニシキヘビの卵は、すでに数個殻から出ていたのですが、奇跡的に、回収中に何個か殻を破っただけで、しかも赤ちゃん蛇もすべて回収することができました。
赤ちゃんニシキヘビは、体長25センチから40センチほどもあり、とても素早かったのです。チームの到着があと数分遅れていれば、何十匹もの赤ちゃん蛇が、野に放たれていたことでしょう。
このニシキヘビを捕まえないと
ベルジェロンさんは、50個もある卵を抱えたこのニシキヘビを見たときに、どうにかして取り除かないといけないと感じたそうです。ベルジェロンさんによると、ビルマニシキヘビがフロリダの湿地帯に及ぼす影響は測りしれないとも言っていました。
50ものニシキヘビの赤ちゃんをすべて回収するのは、ほぼ不可能であり、タイミングよく羽化する前に回収できたのは、本当に幸運だったのです。
ニシキヘビの卵を回収するは、とても意味がある
今回、ベルジェロンさんは、とても運がよかったのです。"ワイルドマン"と呼ばれるダスティー・クラムさんによると、サウス・フロリダ・サンセンティーンは、特にメスのニシキヘビを探しているそうです。
こういった多くの卵を抱えた雌を確保することは、とても意味がるのです。だって、一匹の蛇を捕まえることで、今後爆発的に増えるであろう蛇の駆除に繋がるんですから。と述べています。
では、ニシキヘビがどうやってフロリダに入ってきたんでしょうか?
もともとビルマニシキヘビは、東南アジア産ですが、その美しい体の模様のため、高級なペットとして買われることも多かったのです。多くの蛇や爬虫類収集家は、特にニシキヘビを好んで飼っています。
フロリダの住民の中にもニシキヘビをペットとして輸入する人もいて、1980年代には、そのニシキヘビが、フロリダの湿地帯に逃げたり、放たれたりしたため、外来種として生息することになったのです。
ニシキヘビは、多くの在来種を捕食します
他の蛇同様、ニシキヘビも顎を外して、大きな哺乳動物や鳥を捕食することができます。フロリダには、350種を超える鳥が生息し、その多くが、絶滅危惧に指定されていて、ニシキヘビの恰好の食事となるのです。
ニシキヘビは、週に一回か二回捕食し、フロリダでは、毎月何百匹もの動物が捕食されています。
ニシキヘビは、更にもっと大きな生物も捕食します
ニシキヘビは、ただ小さな哺乳動物や鳥を捕食するだけでなく、更に大きな爬虫類や哺乳動物も食べるのです。フロリダでは、ニシキヘビが、アリゲーターを一匹丸ごと食べたことも記録に残っています。
ニシキヘビは、特にまだ子猫の大型ネコ科の肉食動物をも食べます。ケニアでは、大人の豹を一匹食べようとしたこともあり、実際には、成功しなかったわけですが、それでも、フロリダの希少なパンサーにとっては、生存を脅かす存在となります。
ニシキヘビは泳げるのです
ニシキヘビは、陸上生活を主にしますが、泳ぎもとても得意なのです。実際、30分ほと息を止めることもできるのです。
そのため、ニシキヘビは、フロリダの湿地帯を自由に泳ぎ回れるのです。こうしたことからも、5メートルもあるニシキヘビが、住宅街の軒先に現れたのも納得できます。このニシキヘビも卵を産卵する場所を求めて、その岸に泳ぎ着いたのでしょう。
このニシキヘビも、こんなに遠くまでやってきました
ロン・ベルジェロンさんによると、このニシキヘビもここまで来るのに、かなり移動したと想定することができるそうです。通常、ビルマニシキヘビは、この家の南方32キロほど離れたところで目撃されています。
もし、このニシキヘビが、この距離を横断してきたとすると、生態系に及ぼした影響は大きいはずです。ハンターたちも、確認できたニシキヘビをすべて捕獲することはできません。
しかも、ニシキヘビにとって格好の産卵場所もあるのです
ニシキヘビの巣は、人家のポーチだけでなく、何キロも離れたお気に入りの産卵場所もあるのです。
スネークハンターのトム・ラヒルによると、ニシキヘビが好む理想の産卵場所がいくつかあるのですが、この家のある場所のかなり北にその産卵場所があるため、おそらくこのニシキヘビは、最適な産卵場所を、その場所で見つけることができなかったと考えられるそうです。
5メートル級のニシキヘビが見つかったのは、これが初めてではない
5メートル級のニシキヘビが見つかることは、人生に一度あるかないかの出来事に感じますが、フロリダでは、これが初めてではないようです。2021年に、湿地帯の近辺で、5メートル級のニシキヘビが見つかっています。
実際、ニシキヘビは、7メートルを超えるものもいた記録もありますが、たいていの場合、4から6メートルのものが多く、そこまで大きなニシキヘビはフロリダでは見つかることはほとんどありません。
何千匹ものニシキヘビが実際には、フロリダには生息している
ニシキヘビが、すでにかなり捕獲されているように思われますが、実際は、全く違います。何千匹、いえ何万匹ものニシキヘビがフロリダには生息していて、在来種の生存を脅かしています。
2020年のタンパ・ベイ・タイムズによると、5千匹を超えるニシキヘビが捕獲されたと報告されていますが、現在もなお、蛇による生態系への影響は懸念されています。
ニシキヘビに天敵はいるのか?
ニシキヘビの体の大きさからもわかる通り、天敵はかなり少ないようです。ニシキヘビの一番の天敵は、人間です。
フロリダ州魚類・野生生物保存委員会によると、アリゲーターの中には、ニシキヘビを食べることのできるものもいますが、実施は、ニシキヘビを捕獲できるほど大きなアリゲーターは、あまり存在しないそうです。つまり、ニシキヘビは、かなり厄介な外来種となります。
州は、ニシキヘビを捕獲するハンターに賞金を!
フロリダの野生動物に与える影響を考慮し、フロリダ州は、スネークハンターにニシキヘビの捕獲に賞金を与えることを決めました。このことで、スネーク捕獲の一攫千金を求めてるビジネスも一気に広がりました。
2020年までに、5千匹以上のニシキヘビが捕獲されましたが、それでもなお、ニシキヘビの生息によるフロリダの絶滅危惧種の生存を脅かしていることには変わりありません。
ニシキヘビを捕獲して生計を立てるものもいる
スネークハンターは、ニシキヘビ一匹を捕獲することで、日本円にして3-4万円ほどの賞金を得ることができます。2019年には、スネークハンターに支払われる賞金や物資への資金が、8千万円ほどにまで膨れ上がりました。
年間を通して行われるチャレンジで優勝すると、110万円ほどもらえます。また、1.3メートル以上のニシキヘビで、6千円ほど獲得でき、30センチを超えるごとに、3千円ほど加算されていきます。
実際にどうやってニシキヘビを捕獲するのでしょうか?
一体どうやってニシキヘビを捕獲するのか気になりませんか?ハンターたちは、実際、棒などを使って蛇の頭を押さえて動けなくして捕獲するようです。
それから、ニシキヘビの頭を固定して嚙まれないようにして、それから捕獲して、安楽させます。
ニシキヘビ捕獲は、州でも有名なコンテストとなったのです
フロリダ州当局は、住民たちのモチベーションを上げる目的で、ニシキヘビ捕獲をスポーツ化しました。毎年7月には、フロリダニシキヘビ捕獲チャレンジが行われ、誰でも参加できるスポーツとなっています。
参加者は、指定された地域内で、ニシキヘビを捕獲し、その捕獲したニシキヘビの数と長さで賞金が支払われます。
生態系を脅かす蛇の駆逐に力を注ぐフロリダ州
ニシキヘビの生息への生態系の悪影響を考慮し、フロリダ州は、ニシキヘビをペットとして飼うことを違法としました。また、フロリダでは、ニシキヘビを捕獲するためのライセンスの取得も無効としました。
2019年の9月には、南フロリダ水道局は、ニシキヘビのハンターの数を2倍に増やし、たった2-3日で、1千人以上もの応募があったようです。
ニシキヘビは、捕獲後どうなるの
ニシキヘビは、捕獲後どうなるのか、多くの人が関心を示しています。ニシキヘビは、安楽死させた後、ハンターの配慮でどうなるのか決められます。中には、ニシキヘビの肉を自分の領地内の動物に与えるものもいます。
中には、ニシキヘビの皮を売るものもいて、ニシキヘビの皮は、バッグや靴、コート、そしてベルトなどに価値があります。
フロリダ州当局は、他の案も検討している
フロリダ州管理当局は、生態系を保護するために他の案件も模索中です。サン・センテネルによれば、水道局は、フロリダ州立大学と共同で対策を練っているようです。
それまでは、ベルジェロンさんのようなハンターを雇って、ニシキヘビの捕獲をしていかなくてはいけません。しかしながら、生態系が元に戻るまでには、かなりの時間が必要なようですね。
ニシキヘビの食欲はすさまじい
ナショナルジオグラフィックによると、ニシキヘビの食欲はすさまじいものらしいです。ニシキヘビは、魚、両生類、鳥、アリゲーター、そして他の大型哺乳類ですら捕食します。
2016年には、捕獲されたニシキヘビのお腹の中から、3匹の鹿が発見され、このことからも、一匹のニシキヘビがどれだけ生態系に悪影響を及ぼすかを伺うことができます。他の研究によれば、ニシキヘビの影響で、哺乳類の生態の半分が奪われたという研究報告もあります。