写真の背景に写りこんだものとは?投稿後に一気に拡散された話題の写真とは
あなたが有名人であるか、はたまた何らかの理由によってソーシャルメディアで多数のフォロワーを抱えていないかぎり、自分が撮った写真がインターネット上で急速に拡散されるとは予想だにしないだろう。しかし、ある女性が友人と行ったカナダでのバケーションの様子を投稿すると、なぜか一気に拡散された。投稿された写真は、渓谷を見渡せる山のハイキングコースなどでポーズをとっているだけの、いかにもよくありがちな写真であるかのように見える。女性は、よくよく目を凝らしてはじめて何が背景に写りこんでいたのかに気づいた。一見したところ普通のハイキング写真が、どうしてそんなに拡散され人気となったのかについて、読み進めていこう。
人気のハイキングスポット
女性は友人と、カナダのハミルトンにある有名なハイキングスポット「ダンダス・ピーク」に出かけた。オンタリオ州に位置するダンダス・ピークのある公園は、特に秋には紅葉を望むことができるとして人気の場所だ。
この公園には、勇気がなければとても座れないような場所があり、そこからは、息をのむような絶景を望むことができるだけでなく、テューズ・フォールと呼ばれる滝を見ることができる。この滝はこの辺りで一番落差が大きく、市民だけなく観光客もこれを目当てにして来るほどだ。
写真家がよく訪れる素晴らしい眺め
この公園で眺めることができる素晴らしい景色を考えると、毎年何千人もの人々が訪れるのも何ら不思議なことではない。崖に突き出た岩から写真を撮れば、色とりどりの素晴らしい紅葉の海をとらえることができる。
こうした景色が撮れるということで、写真家やモデルの撮影スポットにもなっている。一般の観光客も、勇気を出してその岩の上でポーズをとることで、まるでモデルになったような気分を味わうことができる。崖の上に突き出た岩に腰かけているというスリルも、もちろん、この公園の魅力になっている。
日常生活から少し離れたかった
この写真をめぐる謎は、キムという名の女性が友人とこの公園に来ることを決めたときから始まっていた。母親としての毎日の生活から少し離れて、何か冒険的なことをしたかったのだ。
キムと彼女の友人は、その有名な景勝と、それを一望できる崖っぷちの岩について聞き、この公園に行くことに決めた。最初にこの公園のことを教えてくれたのは、友人のいとこだった。そのいとこはキムらに有名な崖の岩に座った自身の写真を見せてくれていた。
山頂に到着
キムと友人は、およそ4キロ程度のハイキングに備えることにした。ハイキングとしての距離はそんなに長くはないものの、素晴らしい景色を一望できる山頂にたどり着くためには坂を上り続けなければならない。2人は写真を撮っている他のハイカー同様、その場所にたどり着いた。
2人は、1人が写真家のように撮影し、1人がモデルになりきってポーズを取ることができるよう、互いに交代で写真を撮ることにした。2人はどうやって写真を撮るか、具体的なポーズまで決めていた。
2人はいとこの写真を再現しようとした
キムと友人は、この公園にハイキングに行くことに決める要因となった、友人のいとこに見せてもらった写真のようなポーズをとることに決めていた。友人のいとこは、崖っぷちの岩の先に腰かけてポーズをとり、その友人はそれを横から撮影していた。
まっすぐに前方を向き、モデルの顔が見えない人気のポーズと異なり、2人がやろうとしている構図であればモデルの顔が見える。さらに、もしラッキーだったら、誰か2人を一緒に撮ってくれる人がいるかもしれないと考えていた。
何かが目に入った
2人は交代に写真を撮ることにした。1人がポーズをとり、他方がそれを撮影する、といったように。はじめはキムの友人の番だ。友人はいとこがやっていたのと同じように岩の上に腰かけようとした。
彼女はどのあたりに座ろうかと思案しているうちに、何か下の方で光っているものがあることに気づいた。彼女はあたりを見回して、目にしたものが何なのかを突き止めようとした。そして、木の枝で何かがブラブラ揺れているのを見つけ、それをつかもうと手を伸ばした。
それは車のカギだった
カギがぶら下がっていた木の枝は、座っていた岩からわずか90センチ下にあった。だが、崖っぷちにいる場合、わずか90センチでも危険度はかなり高い。キムは友人が何をしようとしているのか気づくと駆け寄った。カギをもう一度見てから、2人は顔を見合わせた。
もしカギをとることができれば、誰かの助けになるということは分かっていた。そのため、キムが落ちないように友人がしっかりとキムを支えている間に、キムは腕を伸ばしてカギをつかんだ。
すぐに日が暮れた
友人がカギを回収した後に、気を取り直して2人は写真を撮った。2人は車に戻るまでに誰かを見つけ、2人で一緒に写真を撮ってもらうことにも成功している。
気づかないうちに夕暮れが近づき、ハイキングコースは少し薄暗くなっていた。2人は急ぎ足でがらんとした駐車場まで戻った。この落し物のカギが合う車が見つかればいいなと思いながら。
カギの持ち主はどこにも見つからなかった
太陽が木々の向こうに沈んでいくころ、キムと友人は駐車場に到着した。そして、駐車場はがらんとして、ほとんど他に車がなかったため、落し物のカギがどの車のものかすぐに見つけることができた。
車はまだそこにあったものの、持ち主はどこにも見当たらなかった。日が沈んで辺りが暗くなっていたため、2人はその場に居続けたくなかった。結局、車の運転席側のドアの上の方に、よく見えるようにカギを置いて立ち去ることにした。
誰かが行方不明に
1週間後、ニュースを見て2人は車の持ち主を発見する。誰かあの公園で行方不明になったようだった。警察当局はその行方不明者の車を発見したものの、依然としてその人に何が起こったのかは謎だった。
2人は捜査関係者がすぐに行方不明者を見つけることを望んでいたものの、ほどなくしてこの謎についてもすっかり忘れてしまっていた。再びダンダス・ピークのことに思いを馳せたのは、それからさらに1ヶ月も経ったときのことだった。
ソーシャルメディアユーザー、何かを見つける
ある日、キムは自分のソーシャルメディアにログオンし、友人のいとこの写真がレディット(Reddit)に掲載された後、急速に拡散されていることを知った。レディットユーザーはその写真の中に、ゾッとするものを見つけていた。
この写真に何が写っているのかについてニュースが広がるとすぐに、その投稿が拡散された。それが何なのか、誰もが突き止めようとしていた。
一見、何も変わったところはないようだが…
パッと見、ダンダス・ピークでいとこが写っている投稿写真は、何も変わったところはないように見える。そもそもキムと友人がここにハイキングに行こうと思ったのは、この写真を見てからだった。
背景の木々はほとんどが葉っぱが落ちた後の枯れ木であるため、真っ黒な衣服に身を包んだいとこは際立って見える。ちょっとこの写真を見ただけのキムと友人は、「それ」に気づかなかったのだ。これをよくよく見てみると…
よく見てみよう
この写真を品質が落ちて何も見えなくなる手前まで拡大してみた。この写真を拡大してやっと、どうしてこの写真がインターネット上で急激に拡散されたのか、その理由に気づいた。
写真の中央をよく見ると、白っぽいトップスと黒っぽいズボンを履いた人が崖っぷちに立っているのが見える。これを見たキムと友人は動揺した。あんなところに安全に行けるわけもないのだから。
キムの写真には写り込んでいない
いとこの写真に写ったものを見つけたキムと友人がまず取りかかったのは、自分たちの写真を見返すことだった。それが岩に差し込んだ光の関係などで偶然人のように見えたというのであれば、自分たちの写真にも写り込んでいるのではないかと考えたのだ。
奇妙なことに、キムと友人が撮った写真にはどこにも人影は写り込んでいなかった。2人はいとこの写真を再現しようとして、同じ構図で同じ角度から写真を撮っていたために、いとこの写真に写っていた人影が光のいたずらなら、同じものが写っていないのはおかしいということになる。
謎を解明できなかった
キムと友人は、この一連の出来事について、冷静さを保とうとしていた。それでも何となく不安をぬぐえなかった。事実、そこで行方不明になっている女性がいるのだから…。
これについて考えを巡らせ始めた2人は、もしやこの人影は行方不明になっている女性なのではないかと思い当たった。時期的なタイミングとしては可能性がないとは言えないが、自分たちだけで先走りたくもなかった。
フォロワーに助けを求める
キムと友人は謎を解明することができなかったため、ソーシャルメディアで助けを求めることにした。まず初めにいとこの写真を見てそれを再現しようとしたことなど、すべてを説明して投稿した。
さらに、人影のようなものが写真に写り込んでいることも記載した。人影が見える崖には誰も行くことができないことについても強調した。その後、キムは謎の全貌を明らかにするために必要なことが分かる。
比較するためにもっと多くの写真を
キムと友人、そしてそのいとこは3人で推測したが、比較をしようにも十分な資料がなかった。依然として、写真に写り込んでいたのは人影ではなかったという可能性もあるのだ。
他の写真に同じような光のいたずらがないかどうかを確認するためにも、キムはもっと多くの写真を見るべきだと思った。そして、ソーシャルメディアの投稿の最後に、ここで撮影した写真があれば比較してみたいとフォロワーにお願いをした。
フォロワーに助けを求めた結果
キムはフォロワーに、もし同じ場所で撮影した写真があれば比較のために送ってもらえないだろうかとお願いした。さらに、自分の投稿をシェアして拡散してもらえたらともお願いしていた。そうすれば、もっと多くの人から写真を送ってもらえると考えたからだ。
この写真はすでに拡散していたこともあり、自分たちの話に興味を持って写真を提供してくれる人は多いはずだと確信していた。キムはソーシャルメディアに投稿すると、フォロワーらからの反応を待った。
様々な仮説
ソーシャルメディアで人々はその人影が何であるかについて様々な説を投稿し始めた。過去に行方不明になったハイカーの幽霊ではないかという人もいれば、何か技術的なバグか光の加減だという人もいた。
さらには、人影が見えるところに行く道があるのだと主張する人もいた。こう主張する人たちは、この人影は光のいたずらや幽霊などではないが、ただのハイカーだと述べている。
人影の正体を名乗る人、あらわる
真実を突き止めようとする調査は、あるレディットユーザーがその写真に写っているのは自分たちだと主張したことで、一時的に終わりを迎える。そのユーザーが言うには、自分たちも同じ日にダンダス・ピークに行っていて、謎とされている写真に写り込んでしまったのだろうという。
さらに、そのユーザーは当日、薄いグレーのセーターに濃いめのジーンズを履いていたことも覚えていた。これですべての謎が解明されたかのように思えた。それでも、こうした謎にまつわる議論を終わらせるために、このユーザーがそう主張しているだけという見方も捨てきれない。
マイキー・リスコット、フェイスブックの友人らに世界中を旅行して回る様子をシェア
マイキー・リスコットは世界中を旅行し、多くの人と友達になった。世界を旅する36歳はポルトガルのリスボンに外国人として居住していたものの、ソーシャルメディアを通じて、旅行中に知り合った友人らと連絡を取り続けていた。
リスコットは自分の行きたい国リストの中にある行き先を訪れるたびに、エキゾチックなビーチや現地の市場の写真を投稿し、友人らに近況を伝えていた。
リスコット、バリで友人と会う計画を立てる
リスコットは世界中を旅行するのが大好きで、これまでに54ヶ国を訪れていた。2018年2月にタイに行き、韓国の光州で英語教師をしているというステイシー・エノと出会う。リスコットとエノは8月にバリで再び会おうと約束した。
インドネシアのバリはリスコットにとって55ヶ国目となる。そして、この時点で、リスコットはバリに到着して数時間後に人生を賭けて闘うことになるとは思いもよらなかった。
リスコットとエノ、オートバイでバリを探検
2018年8月22日、リスコットとエノはバリ島にあるウブドという街に到着した。2人はバリ島の高地をぶらぶらと探索するのに、オートバイでまわるのが一番いいのではないかと思った。そこで2人はオートバイをレンタルし、ヘルメットをかぶって出発する。
この時点で、インドネシアに到着してからわずか7時間しか経っていなかった。この後、事態は文字通り最悪な方向へと向かう。
上り坂で、2人の横をバンが通り過ぎる
2人はオートバイにまたがって、丘の上に到着した。おそらく慣れないバイクに慣れない道だったため、注意深く運転していたのだろう。というのも、2人が丘を上る間に、その横をバンが通り過ぎていったのだ。
「バンが通り過ぎた後、前方にカーブが見えました。なので、普通にブレーキをかけたんです。だけど、ブレーキが全然きかなくて、スピードが落ちませんでした。曲がり道に対応しようにも、間に合わなかったんです。」リスコットは回想してCNNに語っている。
リスコット、自分がどこにいるのかわからない
カーブを曲がり切れず、リスコットとエノは丘から谷へと転がるようにして落ちていった。やがて意識を取り戻したリスコットは、自分が一体どこにいるのか分からなかったという。リスコットは後にCNNのインタビューに答え、木々の間から空が見えただけだったと語っている。
2人はバリ島の森のどこかにいることは間違いなかった。だが、うっそうとした森は信じられないほど暗かった。自分がどこにいるのか確かめようとして、リスコットは自分のヘルメットやメガネが無くなっていることに気づく。さらに、左手首も動かすことができなかった。
リスコット、重傷を負い、さらに転落する手前
オートバイでの転落後、意識を取り戻したリスコットは、自分のケガがどれほど酷いかということに気づいた。「背中はまるで半分に割れたかのような痛みで、動くことができませんでしたが、手元に太い(植物の)つるを見つけ、やっと自分の体を引き起こすことができました。その後は一歩一歩、滑りながら進みました。」とCNNに語っている。
リスコットは、そこが傾斜面であったような気がすると述べている。だが、自分がどこにいるのかも分からなかったため、滑り落ちたところで一体どこにたどり着くのかも分からなかった。
エノも生きていたが、リスコット同様、なすすべのない状態にいた
リスコットは大声でエノを呼んだ。すると、エノもまた重傷を負っていて動けなくなっていると答えた。2人ともに重傷を負って動けず、自分たちがどこにいるのかもわからず、無力だった。近くに水の流れる音が聞こえ、この斜面を滑り落ちれば川の中に落ちてしまうのではないかと思い、不安になった。
もし川が深ければ、ケガで泳ぐこともできず、溺れてしまうのではないだろうか…。たとえ浅かったとしても、斜面から落ちた衝撃で、死んでしまうかもしれない。
2人が事故したことを知る人はいない
ヘルメットがなかったため、リスコットは頭部にも重傷を負っている可能性があった。「そのときは『ここで死ぬのか』と思いました。僕たちが事故して転落していることや、ケガしてここにいることを誰も知りませんでしたし、そのとき、どうしてそこにいたのかも一瞬思い出せないくらいでしたから。」とCNNに語っている。
うっそうした森の中で移動することもできず、落ちてきた道へ戻って通行人に助けを求めるということも物理的に不可能だった。
バリ島の警察に電話することはできなかったが、ポケットには驚きのものが
リスコットはどうやって事故が起こったのか、すぐに思い出せなかったものの、それでも少なくとも助けを求めるために何かをしてみなければならないと思い至った。バリで使用可能なSIMカードの入った携帯電話を持っていたはずだったが、事故でどこかに無くしてしまっていた。
しかし驚いたことに、アメリカで使っていた携帯電話が上着のポケットに入っていた。国際ローミングを有効にして携帯電話を使えるか試してみた。かろうじて電波を拾えるくらいだったが、「あること」をするには十分だった。
リスコット、フェイスブックにSOSを送信
「上着のポケットから携帯電話を取り出すと、国際ローミングをオンにしました。弱い電波しかありませんでしたが、フェイスブック上にSOSをあげることにしたんです。」リスコットはCNNに答えている。「助けて。警察に電話してほしい。」とシンプルなメッセージを投稿した。そして、後は待つしかなかった。
ありがたいことに、反応を得るまでに長くはかからなかった。今日では、ソーシャルメディアをどれだけ頻繁に使用しているかによるが、フェイスブック上の友人らは何かがおかしいと気づいてくれたのだ。
友人のエイミー・スパークス、SOSに気づく
エイミー・スパークスとリスコットがシアトルで出会ったのは2004年のことだった。2人は2014年、一緒にネパールに旅行している。そんなエイミーは、リスコットのSOSに最初に気がついた人の1人だった。「マイキーが投稿してから1、2分後にその投稿に気づきました。私はリモート勤務しており、仕事中にもフェイスブックを開いていることがあるんです。投稿を見て、もちろん、驚きましたし、動揺しました。」とエイミーはCNNに述べている。
エイミーは心配になった。何かが起こったのだと思った。
エイミー・スパークス、何かが起こったのだと心配した
エイミーは投稿を見てすぐ、どうしたらいいのか分からなかった。「何か薬を盛られて誘拐されたのかと心配になりました。」
「そこでマイキーのフェイスブックのページに行き、メッセージを送ろうとしましたが、フェイスブックで通話もできるようになっていることに気づきました。そこで電話をしてみました。多分、マイキーと最初に話したのは私だと思います。」そこでエイミーはマイキー・リスコットが実際に深刻な危機に瀕していることを知る。
友人の多くは、つり込み詐欺だと思っていた
リスコットのSOS投稿を見た人は他にもいて、何かが起こったのだと考えた人は他にもいたようだ。「電話で直接話せて良かったと思います。というのも、他の人はマイキーの携帯電話が盗まれて、フェイスブックのアカウントが乗っ取られたのだと考えていたのです。ただ、私はマイキーの声を知っているし、電話で話した相手がマイキーだと分かりました。彼はすごく酷いケガをして、助けを求めていたのです。」と、スパークスはCNNに言った。
やがて、友人らはSOSが詐欺ではなく本物だということに気づく。
リスコット、外の人たちに連絡できる時間は残りわずか
リスコットがフェイスブックにSOSを投稿し、スパークスと通話できたことは信じられないくらい幸運なことだった。リスコットの状況を考えてみても、誰か外の世界の人たちに連絡することは実際にはかなり難しいことだからだ。
左の手首を動かすことができなかったため、携帯電話の入力には右手しか使えなかった。さらに悪いことには、国際ローミングを行ったために携帯電話のバッテリーが残り少なくなっていた。
リスコット、およその位置を知らせるため、ピンを落とす
携帯電話のバッテリーが残りわずかとなっていたが、リスコットはスパークスに位置情報をシェアすることに成功した。「自分たちがどこにいるのか分からないと言っていました。気づいたらどこか森の中にいたのだと。方角も何もかも分からないようで途方に暮れていました。そこで(地図アプリなどで位置情報を知らせるため)ピンを落として私に送るように頼んだのです。」とスパークスはCNNに語っている。
リスコットは自分がバリ島のどのあたりにいるのかも分からなかったが、フェイスブックの位置情報機能のおかげで、およその位置情報をスパークスに知らせることに成功した。
フェイスブック上の友人ら、助けようと一致団結
リスコットのだいたいの位置情報を得た後、スパークスはリスコットを助けようとして、フェイスブック上のリスコットの他の友人らと繋がることができた。バンクーバーにいるリスコットの友人の1人は、インドネシアの友人に連絡し、リスコットの救助に向かってもらえるよう頼み、オランダにいる友人はバリ島の警察当局に連絡していた。
リスコットがシェアした位置情報をもとに、ロサンゼルスにいる友人の1人はオンラインマップを使って、リスコットらが実際に滝の近くにいるのかどうかを調べることができた。
国際的な協力でリスコットとエノの救助が始まる
プラハにいる友人のおかげで、インドネシアにある領事館の電話番号を入手できた。「マイキーの友人らはその電話番号を載せてくれていました。そこに電話して、領事館のクリスティーンという女性と連絡がついたのです。」
「クリスティーンはメールアドレスを教えてくれ、そこにマイキーの位置情報のスクリーンショットを送りました。マイキーが携帯電話を持っていなかったら…もし携帯電話のバッテリーがなかったら…なんて考えたくもありません。」とスパークスは述べている。
リスコット、救助が向かっていることを知らされる
リスコットのフェイスブック上の友人らが団結して協力したことで、最悪の事態をまぬがれることができた。リスコットの携帯電話のバッテリーがなくなってしまう前に、インドネシア当局と通話することができたのだ。
「領事館のジョーと名乗る男性から電話がありました。ジョーは助けがこちらに向かっているが、場所をもう少し教えてほしいと言いました。GPSのピンのそばにホテルがあったので、ホテルの手前あたりにいるのではないかと思うと伝えた直後に、携帯電話のバッテリーがなくなり、通話は切れました。」と、リスコットは回想している。
リスコットら、傾斜面を滑り続けていたため、死んでしまうと思っていた
フェイスブック上の国際救助活動は続いている間、リスコットとエノはどうにかして死なないようにと持ちこたえていた。救助が本当に自分たちのところに向かっていることを祈るしかなかったが、2人とも少しずつ谷の方へと傾斜面を滑り落ちていた。さらに悪いことに、携帯電話のバッテリーが切れてから、リスコットの意識ももうろうとし始めたのだ。
それにもかかわらず、リスコットはエノを不安にさせまいと、救助がこちらに向かっているから大丈夫だと伝え続けていた。「死んでしまうのだと思っていました。だから少しでも安心させてあげたかったんです。」と、リスコットは述べている。
何時間にも感じられたが、翌朝前までに救助が到着
リスコットは最終的に救助が到着するまで3~4時間経っていたのではないかと思うと語っていた。ついに上の道路の方から人の声が聞こえたとき、わずかに残る最後の力を振り絞って助けを求めたのだった。救助隊が到着し、リスコットとエノを谷から引っ張り上げた。
最終的に谷から引っ張り上げてもらったときには朝になっていたため、2人はそこに長い時間いたに違いなかった。太陽の光が差し込み、辺りが明るくなってからはじめて2人はケガの状態を確かめることができた。
リスコットとエノ、かなり下の方まで落ち、死の危険と隣り合わせだった
谷から引っ張りだされた後、「そこではじめて、自分たちがどれほど下の方まで落ちていたのかを見ることができました。かなり下まで滑り落ちていました」とリスコットはCNNに語っている。リスコットとエノはかなり重傷を負っていた。救助隊は2人をトラックの荷台に積んだ簡易ベッドに乗せ、地元の病院まで運んだ。
レントゲン写真から、地元の病院ではとても治療ができないことが判明した。そのため、高度な機器を備えた大きな施設に搬送されることとなった。
リスコット、頭蓋骨骨折と手首骨折のための手術を受ける
リスコットとエノはバリ島のリゾート地クタにあるBIMC病院に移送された後、救命手術が施された。リスコットは頭蓋骨と手首を骨折し、肋骨と椎骨にひびが入っていただけでなく、内臓にも損傷が見られた。
頭蓋骨と手首、腹部に治療が行われただけでなく、胸腔チューブが挿入され、肺に酸素が送りこまれていた。リスコットは術後入院し、退院できたのは2018年9月3日のことだった。
エノも手首を骨折していたが、それより顔に損傷を負っていた
一方、エノは頬骨、鼻、左手首を骨折していた。さらには事故で舌が裂けたようだった。エノのケガはリスコットほど深刻ではなかったため、彼よりも早く退院でき、韓国の自宅に戻ることができた。
リスコットの姉はバリ島まで駆け付け、退院後に容態が安定し、アトランタ郊外にある姉の家に戻れるようになるまで、近くのホテルに滞在した。
エノ、「事故」後も旅を続ける
エノはバリ旅行を「ワイルドな体験」だったと振り返っている。CNNに語ったところによると、事故で散々な目にあったものの、そうかといって世界を旅することをやめるつもりはないようだ。「私とインドネシアで落ち合ったマイキーは、それで55ヶ国を旅行したって言ってました。本当にすごいなと思ったんです。旅行はときに怖かったり危険を伴うこともあるけれど、だからといって私やマイキーが世界を旅することをやめるなんてことはありません。」
こんな体験をした後だと、旅行をしばらく控えるという人もいるかもしれない。だが、リスコットとエノは違うようだ。
2人とも事故のせいで動揺している
リスコットとエノは、死のふちにたった経験から長い間ショックに苦しむ可能性がある。「水曜日にマイキーと話しました。その日は事故からちょうど2週間でした。2人とも、まだ自分たちが事故にあったことが信じられないというか…事故のショックから立ち直れずにいました。」
「私たちは、もし技術がなかったら死んでしまっていたことでしょう。そしてその事実に動揺していました。そして、2人がまだ生きているのには何か理由があるはずだと考えています。」と、2018年9月10日、CNNにエノは語っている。
フェイスブックが本当のヒーローだと気づいている
リスコットはInc.に「フェイスブックは私たちを救った『ようなもの』ではなく、フェイスブックのおかげなのです。もし危険を知らせるメッセージを送れば、(フェイスブックの)友人らが僕を探すのを助けてくれることを知りました。とても怖かったんです。正直言って、もうダメだと思っていました。」
リスコットは2,600名以上のフェイスブック上の友人らに感謝している。この中に、少なくとも1人は自分が出したSOSを真剣に受け止めてくれると信じていた。そして奇跡的に、十数人の友人が自分のために動いてくれたのだ。
旅行中に作った友人らが宝物
エノは旅行中にできた友情のありがたみに気づいた。「旅行中には、面白いことや素晴らしいことをシェアしたいと思えるたくさんの人に出会うことができます。事故そのものは悲惨でしたが、おかげで、これまでに私たちがどれほど多くの人と出会ってきたかについて思い出させてくれました。」と、エノはCNNに述べている。
リスコットのフェイスブック上の友人らが事故当時、オンラインになっていたのは幸運なことだった。これがたとえばソーシャルメディアで友人やフォロワーの少ない人に起こっていたならば、救助が間に合わなかったかもしれなかった。
テクノロジーによって窮地を逃れたが、そうでなければ死んでしまっていたかもしれなかった
「現代テクノロジーと友人らがいなければ、私たちは今生きてはいなかったでしょう。冒険の途中で出会った人々がいなければ、おそらく窮地をこんなにすぐに脱することはできなかったでしょうし、今こうして奇跡を感じることもできないだろうと思います。」と、エノはCNNに答えている。
これが現代ではなく一昔前に起きていれば、本当に奇跡でもない限り、リスコットとエノを見つけることはできなかっただろう。アメリカの携帯電話がリスコットのポケットに入っていて、しかもそれを使うことができたのも奇跡だった!
リスコットとエノ、新たな困難に直面
エノは韓国から、ケガが完治するまでに数ヶ月かかると記者に答えている。そして、英語教師の契約が終了したら、ミシガン州にいる実家に戻るつもりだと語った。これは信じられないほど高額な医療費を支払わなければならないという新たな問題に直面しているためだ。
結果として、エノの家族はGo Fund Me(クラウドファンディングプラットフォーム)ページを作成し、2018年9月13日付でおよそ140万円以上を集めている。
医療費、急速に増加
エノの医療費はおよそ320万円に上り、リスコットの医療費はその倍だった。手首の手術だけでもおよそ100万円支払わなければならず、手術代に加えて、もちろん病院に入院している間、一晩につきおよそ6万円が加算された。
ありがたいことに、リスコットにはすでに素晴らしい友人らがたくさんいるが、そのおかげで650万円の医療費の半分以上が集まっている。
わずか200円の飾りの中に何かを見つけるなんて、予想だにしなかった女性
マサチューセッツ州プリマスに住むプリシラ・ベイリーは、地元のリサイクルショップでとある装飾品に目をとめた。プリシラは、その飾りがたった200円ほどで売られていることに気づいた。これはかなりお得だわ、とプリシラはその場ですぐに購入を決めたのだった。
そして、その飾りに何かがあることに気づいたのは、家に持ち帰ってからのことだった。
内側に何か奇妙なもの
プリシラは以前にもそのリサイクルショップを利用したことがある。たいていの場合、個性的で美しい小物が通常の小売店で販売されている定価の何分の一かで手に入るため、プリシラはリサイクルショップが大好きだった。用事のついでに外出するときにはいつもフラッとリサイクルショップに立ち寄るのだった。
プリシラはリサイクルショップを何度も利用している常連客だったが、それでも、何か本当に特別なものに出くわすなどとは思ってもみなかった。
その掘り出し物はどのようにして見つけられたのか
リサイクルショップでプリシラが購入した装飾品は、吹きガラス製品が並べられた棚に置かれていた。プリシラはガラスでできた飾りが大好きで、この日見つけた飾りは、プリシラの好きな青色だったのだ。
プリシラはその飾りを手に取って、底についていた値札を見た。それはわずか200円だった。こんな素敵な飾りがたった200円だなんて。プリシラはすぐに購入を決めた。
価格は安すぎたのか?
リサイクルショップではかなりお得に商品が買えるとして知られているが、それでもガラス製の装飾品がわずか200円というのは安すぎるようだ。何か難点でもあるのかしら?どこかおかしいところでもあるのだろうかと、プリシラは装飾品を注意深く見てみたが、どこにも欠陥は見当たらず、普通の小売店で売られているような商品と何ら変わらないように思われた。
さらにその飾りは、大きさの割に重さがあった。多くのガラス材を使って丁寧に作られており、もろいようでもなかったし、壊れやすそうだというわけでもなかった。
お宝を持ち帰る
プリシラは新しい飾りを自宅に持ち帰って包みから取り出すと、より詳しく見てみることにした。
金属でできた細工をよく見たプリシラは、そのデザインが天使か何かだと思った。この飾りにも何か物語があるに違いないとプリシラは考えた。中古品には必ず何か素敵な物語があるものだ。飾りを手に取って、裏返し、青いガラスをほれぼれと眺めた。その飾りは本当に美しく、うっとりさせるような作品だった。
思ったよりも重い
プリシラは手にその飾りを持ちながら、思っていたよりもずいぶんと重いことに気がついた。装飾品の専門家などではないが、装飾品が大好きなプリシラは、これまでにもかなりの数のガラス製の装飾品を集めていた。そのため、この飾りが他のガラス製のものよりも少し重いことに気づいていた。
飾りが思ったよりも重かったという事実は横におき、とりあえず、その飾りをキッチンに飾ることにした。そして後に娘が来るまで、重大な詳細を見落としていたことに気づかなかったのだ。
娘が見つけた事実
この写真の女性は、プリシラの娘のキャットだ。キャットも吹きガラスの飾りが好きで、母親がリサイクルショップで見つけてきた飾りを見せると興奮していた。キャットがどのくらい吹きガラスが好きかというと、いつかマサチューセッツに自分の吹きガラス製品を集めたお店を開きたいと思っているほどだ。
プリシラは、その飾りが通常のガラス製の装飾品よりも重いことをキャットに伝えなかったが、それでも、キャットは何かがおかしいことに気づいた。
何がおかしいのだろうか?
ハートの形をした飾りは本当に綺麗だと思ったキャットは、そっと壁から飾りを取ると、詳しく見てみた。キャットも思ったよりも重量があることに気づき、それを母親に伝えた。そして、プリシラもまた、その飾りが通常のものと比べてかなり重いと思った、と述べたのだ。
キャットにある考えが浮かんだ。懐中電灯で、その飾りの中に何かが入っているか見ることにしたのだ。そして光で照らすことによって、素晴らしいものを映しだすことになる。
中身は?
プリシラも、懐中電灯で飾りの中を照らしてみるのは良い考えだと同意した。そして初めて飾りの中身を照らしたとき、何も変わったものは見えなかった。ところが、次の瞬間、飾りの中で何かが動いているのが見えた。
光をあてると、その飾りの中が実は2つに分かれていることが分かった。そして、小さい方で何かが動いているようだった。プリシラはどうしても中身が何なのか知りたくなっていた。
助けを求めることに
プリシラとキャットは、この謎を解明するためには専門家の協力が必要だと判断した。そこで、プリシラは地元の警察に連絡し、中身を調べてもらうことにした。中に入っているものが何であれ、何となく、危険で違法である気がしたのだ。
プリシラはさらに新聞記者らを家に招き、リサイクルショップで200円で購入した謎の飾りを見せようとボストン・グローブに連絡した。プリシラは飾りの中身が何であるか見当もつかなかったものの、何か面白いものだろうという気がしていた。
ただの飾りではない
新聞記者がプリシラの家に来ると、プリシラはその飾りについて、これまでの経緯を話した。キッチンテーブルに座ったプリシラは新聞記者に、「今は皿洗いをするときにここに掛けているの。ときどき眺めたりしてね。」と語っている。
その飾りの得体は依然として知れないものの、もっとよく見えるようにプリシラが飾りを新聞記者に手渡すと、プリシラと同じように新聞記者らも興味をそそられたようだった。これがただのクリスマスツリー用の装飾品ではないのは明らかだった。
何か粉っぽいものかも?
そして、プリシラとキャットは、どうやって自分たちがガラス製の装飾品の中身が2つに分かれていることを発見したのか、新聞記者らの前でやってみせた。プリシラが飾りを高く持ち上げて、キャットが懐中電灯で光をあてると、確かに中が2つに分かれている様子が見てとれたのだ。
キャットは記者らに中身についてこう語っている。「母に言ったんです。『遺灰か何かじゃないかしら?』って。」たとえ中身が遺灰だったとしても、それが誰のものだったのか、どうやってリサイクルショップに渡ったのかについての謎が残る。
もし中身が遺灰だったら?
飾りが綺麗なのは疑う余地もなかった。そして、もし中身が遺灰なのであれば、どうしてこんなに見事なディテールで丁寧な作りになっているのかも納得できる。しかし、この2人の女性は、中に遺灰が入っていることも知らずに飾りを振っていたのだ。
2人は、もしかして無礼だったのではないかと考え、さらに、この遺灰が誰かの親族のものであれば、自宅に置いておくのもどうだろうかと考えていた。
どうしたらいいのだろうか
最初は、誰かの遺灰を家に置いているだけでなく、中身を知らずに何度も手に取っていたことを考えると、薄気味悪く、少し不安になった。
しかし、プリシラはさらに考えを巡らせ、このような飾りの中に遺灰を入れてまで、故人を近くに感じていたいと思った家族の気持ちに共感した。ただ、どのようにしてリサイクルショップに流れついたのだろうか?プリシラは何とかしなければならないと感じていた。
持ち主に返すべき
プリシラは、できる限りのことをして、本来の持ち主に飾りを返そうと決意した。そしてニュースメディアの力を借りて、誤ってリサイクルショップに引き渡してしまった、この遺灰の親族を見つけることができたらと考えていた。もしこの手がムリなら、別の方法を考えなければならなかった。
「この飾りは本当に綺麗です。何か物語があるはずなんです。そして、この飾りの持ち主を探すこと、それが私の目標です。」と新聞記者に語っている。さらに警察にも連絡したものの、持ち主を探しだせる気はしなかった。
みんなに知らせる
記者らがプリマスの自宅を去った後、プリシラとキャットは、持ち主が見つかるまでガラス製の装飾品を自分たちで管理することに決めた。新聞やメディアで取り上げられることによって、持ち主探しがうまく進むことを願っていた。
2人には他の考えも思いついていた。フェイスブックでこの飾りについて投稿し、ソーシャルメディアで何か手がかりがつかめるかもしれないと思ったのだ。
ソーシャルメディアを利用した
青いガラス製の装飾品をアップで撮ると、キャットはその写真と、その飾りが自分たちの手元にある経緯を説明した。「こんな大切なものがポイと捨てられ、200円の値札をつけてリサイクルショップにあったことに心が痛みます。」とシェアしている。
そして、これについて何か知っているのであれば、持ち主に返してあげたいので連絡してほしいとお願いした。
もう1つの特別な飾り
さらにプリシラは飾りを購入したリサイクルショップ「セイバーズ」にも連絡をとり、経緯を話した。リサイクルショップの店長は、商品のほとんどは地元の人々からの寄付である場合が多いため、プリマス周辺に住んでいる人がその飾りを持ち込んだ可能性が高いと話した。
そして、近くに住むコニー・ホワイトマンと名乗る女性がキャットの投稿に反応したのもこの頃だった。「実は私も似たようなものを持っているので、あなたが見つけた飾りについて詳しく教えてください。私もリサイクルショップで買ったんです。私のも重いです!」
元々2つあったのだろうか?
フェイスブックへの投稿に対し、他にも同じようなものを持っているとコメントがつき、その女性とのやり取りは続いた。似たような飾りを同じようにリサイクルショップで買ったという女性は、それをプリシラらの住む東海岸ではなく、北西部で購入したと答えた。女性は「私のは虹色で同じようにハート形だけど、装飾も少ないし、サンキャッチャーみたいな感じです。」と説明した。
さらに、その女性は2人がこれまでに知らなかった飾りについての情報を知らせてくれた。「セントヘレナ山の灰で作られているようですよ。」と。
様々な説が浮かび上がる
さらに、飾りの中に入っている灰がどこのものなのかを知る女性は「もしかすると、中に灰が入っているように見えるのはそのせいかもしれませんね。」と答えた。
この間ずっと、プリシラとキャットはこの飾りが小さな骨壺のように、誰かの遺灰が入っていると信じており、その灰が何か他の要因で入り込んでいた可能性など考えもしていなかった。2人は確かな回答を得ることはできなかったが、フェイスブックにあげた投稿は未だに拡散されているため、もしかすると真実が見つかる可能性もあるのかもしれない。