珍しい種類のコイヌだと思って飼い始めた生き物の正体とは?!
家族の一員としてイヌを迎える家庭はたくさんいます。イヌは世界でも最も人気のペットと言えるでしょう。とある家族、ある時思い切ってイヌを飼い始めます。珍しい犬種であると聞かされていた家族。新しい仲間が増えたことに大興奮していました。しかし、新しいコイヌを飼い始めたという喜びは、すぐに恐怖へと変わります。家族はこの新しいペットには変わった習性があることに気がづいたのです…。
イヌを飼う準備はOK
中国昆明市の南西の地域に暮らすスー・ユンとその家族。スー・ユンは夫ともに2人の子供の子育てに奮闘する働き者の母親です。ごく普通の家族ですが、新しいイヌのペットを迎えてすべてが変わってしまいます。
家族は、この決断のお陰で人生が180度変わってしまうとは思ってもみませんでした。新聞の一面を飾り、家族は一躍時の人となります。
すべてを変えた旅
幼い子供を育てることはかなりの労力を必要とします。そのため、時には気分転換に旅行に出かけることも必要です。2016年、スー・ユンはみんなが楽しみにしていた家族旅行を計画しました。
出発の日が近づいてくると、スー・ユンは家族旅行に必要なものがすべてそろっているか確認作業に明け暮れます。しかし、どれだけ周到に準備をしたとしても計画外の出来事というものは起こってしまうもの。例えば、かわいいコイヌとの出会いです。
予期せぬ出来事
数か月間心待ちにして、待望の旅行の日が訪れました。旅行中、スー・ユンは子供たちを散歩に連れていくことにします。そんな時、販売中の小さなコイヌたちに遭遇しました。
かなり前から、子供たちからコイヌを飼いたいとせがまれていたスー・ユン。販売中のコイヌを見て、心を完全に奪われてしまいました。ということで、ついにイヌを受け入れようと決意します。
受けていた警告
コイヌの購入後、イヌを販売していた男性はこのイヌの背景を説明してくれました。販売者からは、イヌは最大82キロ、高さ60センチまで成長するチベタン・マスティフであると警告されます!
それでもコイヌを飼うことにした家族は、黒い毛にちなんでリトル・ブラックと名付けました。
家族は新しい家族の一員を溺愛
旅行中、リトル・ブラックにメロメロの家族は、早く新しい家を見せてあげたいとワクワクしていました。自宅に帰ると、家族はイヌの育て方に関していくつかのことを決めなくてはいけません。
昆明市の天候を考えれば、ペットは屋外で暮らすことが可能です。家族は室内犬として飼うのか、屋外犬として飼うのか、決める必要があります。
そばに置いておきたい
最終的に、できるだけ家族のそばにおいておきたいという理由からリトル・ブラックを室内犬として育てることにしました。
リトルブラックは着実に成長し、家族はすぐに小さいイヌにしてはかなり食欲が旺盛であることに気づきます。しかし、リトル・ブラックは新しい家に問題なく順応している様子だったため、家族は特に心配はしていませんでした。
おさまらない食欲
販売者の言う通り、リトル・ブラックはすぐに成長します。さらに、このイヌが異常な食欲を持っていることは明白です。
もちろんコイヌは成長するために食料が必要ですが、リトル・ブラックがこれほどまでたくさん食べるとは家族も予想外。しかも、その食生活は異常そのものです。毎日、箱いっぱいの果実とバケツ2つ分の麺を食します!
問題化してきたリトル・ブラックの食事情
他のイヌであれば、毎日これだけの果物と麺を食べていればおそらく病気になるでしょう。しかし、リトル・ブラックは食生活の影響を一切受けておらず、食べられるだけかきこんでいました。
ここまでくるともう手に負えません。家族は何かがおかしいのでは…と疑い始めます。リトル・ブラックが1歳になるころには、餌代にかなりの額を費やすようになっていました。
止まらぬ成長
時がたつにつれ、リトル・ブラックは成長し続け、その食欲もとどまるところを知りません。初めはリトル・ブラックの食欲を心配していただけですが、家族はその大きさにも懸念を抱くようになっていきました。
かなりの大きさになることは承知していましたが、実際の大きさは予想をはるかに超えています。3歳になると、リトル・ブラックは113キロ、身長は1メートルに達していました。
スー・ユンが台所で目撃した不思議な光景
一般的なサイズよりイヌが成長することは珍しいことではありませんが、リトル・ブラックが思っている生き物とは異なるかもしれないことを示すヒントは他にもあります。ある時、スー・ユンは無視できないとある光景を台所で目撃したのです。
そこにいたのは、人間のごとく後ろ足で立ち上がるリトル・ブラック。この瞬間、スー・ユンはリトル・ブラックは普通ではないと理解し、彼の正体を暴く必要があると決意したのでした。
他のヒントを求めて
びっくりですが、スー・ユンがリトル・ブラックの後ろ足立ちを目撃したのは1度だけではありません。さらに頻繁に後ろ足立ちをするようになるペットのイヌに、スー・ユンは恐怖を覚え始めます。
そこで、何か変わったことが起こっていないか確認しようと、イヌをよく観察してみることにしました。歯の大きさは体格に比例していて、リトル・ブラックが成長すると鼻づらがますます典型的なチベタン・マスティフ顔から遠ざかっていきます。
大きくなりすぎたリトル・ブラック
スー・ユンがペットに関する懸念を抱く一方、子供たちはリトル・ブラックという大型犬が集める注目を楽しんでいました。少しずつ、「ユニークなイヌ」のうわさが地元に広まり始めます。
リトル・ブラックの成長は止まらず、ついに家の中で飼うには大きすぎるサイズに到達してしまいました。そのため家族はその場しのぎの犬小屋を庭に作成します。しかし、だからと言って問題がすべて解決されたわけではありません。
振る舞いに変化
リトル・ブラックの歯、鼻面、大きさは確かに腑に落ちない部分がありましたが、恐ろしいのは凶暴化してきたその性格でした。幸い、けが人は出ていませんでしたが、リトル・ブラックはスー・ユンと家族に対して攻撃的な態度をとるようになってきたのです。
さらに、この時期からリトル・ブラックが今まで1度も吠えた事がないということに気づき始めます。リトル・ブラックが出す音はどちらかといえば咆哮で、普通のイヌの鳴き声とは異なっていたのです。
恐怖に襲われたスー・ユン
リトル・ブラックが2歳になるころまでには、スー・ユンは恐怖すら抱くようになっていました。巨体であるためリトル・ブラックを外で飼ってはいたものの、なんとも言えない落ち着かなさを感じていたのです。この時までには、リーシュにつないで散歩することはほぼ不可能でした。
家族のことを心配したスー・ユンは、インターネットを駆使して愛犬のことを詳しく調べることにします。普通のペットであるとは思えなかったのです。
真実の時
リトル・ブラックの異常な大きさの歯、体重、後ろ足で立つ能力を詳しく調べたところ、スー・ユンは衝撃を受けます。チベタン・マスティフだと思っていたこのペットは、全く異なる生き物だったのです。
かわいいコイヌは、実はアメリカグマだということが発覚しました!驚いた彼女はこの情報を得て途方に暮れてしまいましたが、家族を守るために何か手を打つべきであるということを理解していました。
普通のアメリカグマとは異なる
さらに調べたところ、イヌだと思い込んでいたクマは普通のアメリカグマとは異なることがわかりました。リトル・ブラックはチベットグマやヒマラヤグマと呼ばれることもあるツキノワグマだったのです。
この種類のクマは中サイズまでにしか成長しないため、家族も長い間イヌであると信じて疑っていませんでした。とはいえ、成長すれば200キロ、1.8メートルの巨体に成長します!
難しい状況
幸いにも、リトル・ブラックのようなツキノワグマの食事は植物が主です。しかし、追い打ちをかければ人間に対して攻撃な姿勢を見せることでも知られています。幸い、スー・ユンの家族がリトル・ブラックから攻撃を受けたことはありません。
しかし、スー・ユンはこの状態をどうにかすべきであると考えていました。中国ではクマを飼うことで実刑判決を受ける場合があることを考えればなおさらです。スー・ユンは深刻なトラブルを抱えてしまったことを理解していました。
専門家に連絡
ペットのことを愛していたスー・ユンの家族でしたが、自宅にクマを置いておくわけにはいきません。クマを家から排除する必要があるとわかってはいましたが、どこから始めたらよいのでしょうか。
初めに思いついたのは、リトル・ブラックを引き取ってもらえるか確認するために地元の動物園に連絡するという策です。しかし、残念ながら出生証明書がなければ動物園は動物を引き取ってはくれません。
当局に連絡
スー・ユンは緊張感を覚えていたものの、結局警察に通報する決意をします。意図的にクマを購入したわけではなく、チベタン・マスティフであると信じ込まされていたにすぎないからです。
また、リトル・ブラックに虐待をしたというわけでもありません。どちらかと言えば、状況を加味すれば最高の家を提供したといってもよいくらいです。通報後、警察と森林安全局の野生動物の専門家が到着しました。
スー・ユンのストーリー
スー・ユンは自分の立場から状況を説明し、警察と専門家の質問に答えました。事情聴取では次のように語っています。「(リトル・ブラックが)成長するにつれ、どんどんクマのようになっていったんです(…)」。さらに、彼女はクマを恐れていると話しました。
スー・ユンの話を聞いた後、警察と専門家は裏庭に向かって目にした光景に度肝を抜かれます。
ショックを受けた警察
裏庭に到着すると、警察と専門家はスー・ユン一家が一緒に暮らしていた生き物と対面します。檻の中に座っていたのは巨大な動物。見た目だけでも明らかにイヌではありません。動物をよく調べた後、警察と専門家はやはりクマであるという結論に達します。
その後、リトル・ブラックの入手先、育て方、通報するまでに時間がかかった理由など、さらなる聴取が行われました。
状況の対応
警察がスー・ユン一家が誤ってクマを購入した経緯に関して情報を集める間、専門家たちはリトル・ブラックの調査にあたります。専門家たちはクマの健康状態が良好であり、ケガや栄養不足などに苦しんでいないことを確認しました。
もちろん、家でクマを飼っていたことで罰を与えられるのではないかと、スー・ユン一家は気が気でなりません。周りの人たちが状況に理解を示してくれることを願うばかりです。
裏付け
軽くリトル・ブラックを確認した後、野生動物の専門家たちは、クマが十分えさを与えられており、健康で、現在の状況にとても満足していると結論付けました。
しかし、ここからどのようにして近くの野生動物救出センターに移送すべきか考えなくてはいけません。結局、鎮静剤を使って安全に移送する方法が一番であるという結論に達します。
スー・ユンに集まる注目
リトル・ブラックが野生動物センターに移送されると、スー・ユンの恐怖は現実になりました。意図せず潜在的に危険なクマを庭に飼っていたということで大きな議論が巻き起こったのです。
スー・ユンの名前が様々なニュースで取り沙汰されて、人々はどうやったらクマをイヌと見間違えるのかと不思議に思っていました。『ナショナル ジオグラフィック』がこの話を報道すると、自分も「間違った」動物を買わされたと名乗りを上げる人たちまで現れました。
結論
スー・ユンは快く警察に協力したため、長期的にはこれが功を奏しました。中国ではツキノワグマは保護種に指定されていますが、スー・ユンは実刑を受けることなく、協力することで罰金を受けたとしても減額措置が取られることを約束されました。
家族とリトル・ブラックにとってはかなりのトラブルにはなってしまいましたが、最終的にはすべて丸く収まったようです。リトル・ブラックはクマに適した新しい家を得て、家族は庭にクマを飼うという状況から解放されました。リトル・ブラックのことを恋しく思っているスー・ユン一家は、いつの日か再びこのクマに会える日を心待ちにしています。