「荷物を持つ」と申し出た少年の人生が180度変わった理由とは
マット・ホワイトは、どこにでもいる普通の男性でした。スーパーに買い物に行くときは、一人分の食材を買い込み、リンゴもカゴに一個入れる。そんな普通の男性でした。しかし、ある夜、テネシー州のメンフィスにある地元スーパーから帰る途中、マットは、彼の人生を今後大きく変えることとなる、ある少年と出会うのです。
少年は、彼にある頼みごと(謙虚なお願い)をしました。そして、その瞬間から2人の人生は、複雑に絡み合って行くことになるのです。一体、彼らになにが起こったのか、じっくり読み進めてみましょう。
マット・ホワイト
こちらの写真がマット・ホワイトです。この話は、音大を卒業した30歳の彼から始まります。毎週、彼はスーパーに買い物に行き、食料品や日常生活品を買い込んでいました。
彼のよく行くスーパーは、テネシー州メンフィスという貧しい地域にある、アメリカの最大スーパーマーケットチェーンKroger(クローガー)でした。この日も、彼はいつものように商品の代金を払って、出口に向かって歩いているところでした。
偶然の出会い
マットがスーパーを出ると、10代くらいの少年が、彼の方に向かって歩いてきました。マットは、その少年は一人であり、どこか悲しそうで恥ずかくしているように見えました。
お互いにアイコンタクトを行ったことで、マットの頭の中には、いくつかのシナリオが駆け巡りました。彼は、この少年が物乞いなのか、もしくは、ただ道を訪ねたいだけなのか、疑問に思い始めました。そして、少年は、口を開き話し始めたのです。
チョウンシー・ジョーンズ・ブラックに会う
その少年は、チョウンシー・ジョーンズ・ブラックだと名乗り、16歳だと言いました。彼は、バスに乗って”お金持ちのクローガー(クローガーで買い物をする人)”を探して、食べ物をもらえるか探していました。
しかし、この日のチョウンシーは、夕飯の為に、ただお金を求めているわけではありませんでした。彼は、1時間以内に出る終バスに乗るまでの間に、マットに物乞いを始めたのです。
どんな仕事でもやります
チョウンシー・ジョーンズ・ブラックは、明らかに低体重であるように見えました。マットは後に、「彼は、恥ずかしそうで、空腹で、今にも倒れそうに見えた」と言います。そして、チョウンシーもまた、「彼の言葉通り、その日は何も食べていなかったんだ」と言います。ブラックは、「ドーナッツの箱と引き換えに、彼の荷物を待たせてくれないか」と申し出ました。
後にマットは、「心の中では、大きな声で”いいよ”と言ってあげたかったよ。でも、僕は彼に少し笑いながら、”わかった、ドーナッツを買ってあげてもいいよ”としか言えなかった」と言います。
驚きの始まり
マットは、チョウンシーをとてもかわいそうに思いました。そして、この少年がドーナッツを購入するのにも、苦労するような生活に興味を持ちました。そして、マットはなぜ、自分がこの少年に会うことになったのかを考えるようになりました。
チョウンシーは、母親と一緒に住んでいて、家にはあまりお金がないと言いました。彼が持っていたのは、バス券だけでした。そして、見知らぬ2人は、ドーナッツの場所に向かってゆっくり歩き始めます。
マットは、少年の期待を上回った
マットは、少年にドーナッツのパックを渡しましたが、それだけでは不十分だと感じました。自分に助けを求めている少年が目の前にいるのです。その彼に、ただ甘いだけのお菓子を持たせて、送り返したくはありませんでした。
もちろん彼自身も、チャウンシーにそこまでする責任がないことはわかっていました。しかし、彼はチャウンシーがお礼に、何か彼のために働いて返そうとする、その姿勢が気に入りました。そして、マットは、これは困っている子供を助けるいい機会だと思いました。
ゆったりした買い物時間
マットとチャウンシーは、スーパーの中を話しながら、そのまましばらく歩き続けました。マットは、彼を様々な食品売り場に連れて行き、お米やスナック菓子、野菜、パスタ、牛乳、歯磨き粉、そして歯ブラシなど、あらゆる物をカートに入れました。
チャウンシーは、最初なにが起こったのかわかりませんでした。そして、こんなにも協力的に助けてくれたことに、マットは感謝の気持ちを表しました。それに対して、マットは、大したことないと言ったような素振りを見せました。
チャウンシーは、現状打破のモチベーションがある
見知らぬ二人が友人のように話している間、マットは、チャウンシーの私生活についてもっと突っ込んで聞いてみました。 学校はどうか、母親はどうしているのかなどを、ゆっくりと尋ねていきました。
「チャウンシーは、学校では、ほぼ全ての教科を真面目に授け、A評価を取っており、お母さんも家賃を払う為に、仕事を探そうとしていることを教えてくれました。」とマットは語ります。
チャウンシーは、恩返しをしたい
マットとチャウンシーが話している間、チャウンシーは、自分のことを”貧しい”と言い続けました。マットは、彼にお金がないことはわかっていましたが、”貧しい”こと自体も、彼のアイデンティティーの一部であると考えました。
チャウンシーは、自分の目標はお金持ちの起業家になることだと語ります。そして、将来充分な収入を得たら、マットが彼にしてくれたように、自分と同じような状況の人に食料品などを与えたいと話します。
チャウンシーを家に送らなければ
チャウンシーの分の食料品の支払いを終えた時、その事に彼はとても感謝しました。そして、買い物が終わった今、彼はバスに乗って、母親の元へ帰らなければなりません。
マットは、この量の食料品を、少年が一人で持ち帰ることはできないだろうと考えました。そして、彼は、チャウンシーの家まで、送っていくことを提案しました。そして、今日という1日を気持ちよく終わらせようとしていました。
チャウンシーの生活状態
マットは、「私は、彼を家まで送り届けました。バスに乗る必要がなくなったからか、彼は家に着くまでとても謙虚でした。」と語ります。そして、チャウンシーが家には何も食べ物がないと言っていたのは、決して誇張していないことを知るのです。
更にマットは、「冷蔵庫の中では、2つのランプが光っているだけで、そこには何もありませんでした。」と続けました。そして、その家には、マットが最も頭を悩ます問題がありました。
バーバラ・ブラックに会う
マットが彼の家に着くと、チャウンシーの母であるバーバラに会いました。彼女は、とても親切で優しく、マットが息子にしてくれた事に対して、とても感謝していました。しかし、バーバラもどこか弱々しく、痛みに耐えているような様子でした。
バーバラは、ふるえが止まらない体の状態にありました。彼女は、自分で動き回ることが難しくなっていたのです。マットは、この状況を見て、何か他にもっとこの家族にできることがあるのではないかと考え始めました。
マットは、ある計画を思いついた
マットが、他の計画を話す前に、彼はチャウンシーとバーバラの為に食料品の開梱を手伝う事にしました。すべの食料品を受け取ったチャウンシーはとても幸せそうに見えたとマットは話します。そして、”やっと少年らしさが見えた”と続けました。
ブラック一家の冷蔵庫が食料品で満杯になったところで、マットは彼らに別れを告げました。彼は、それぞれにハグをし、家を出ました。チャウンシーは、まだ知りませんでしたが、彼らが、マットを見たのは、これが最後ではなかったのです。
マットは、彼らの生活を永続的に変えたいと思った
チャウンシーの家を出た後も、マットは彼らの生活状態が頭から離れませんでした。彼は、周囲にチャウンシーやその母親について聞き込みをしたり、彼らの生活状況を再度確認したりしました。しかし、このどちらの方法もバーバラの障害手当てを増額させる決定的な事項とはなりませんでした。
チャウンシーは、もう何年も新しい服を買っていませんでした。そして、マットは今日購入した食料品が1週間しか続かない事に気づき、彼らの生活をどうにかして、永続的に変化させることはできないかと考えました。
家族を救うには、他の人の手助けが必要
マット・ホワイトは、今まで快適な生活を送ってきました。彼は、食料品を買うのに充分なお金を持っていたし、住む場所を借りるお金もありました。しかし、チャウンシーに永続的に補助ができるかといわれれば、それは難しい話でした。マットは、ソーシャルメディアを利用して、この少年を支援できる人たちがいないか、助けを求める事にしました。
彼は、Facebookでチャウンシーとの出会いについての一連をシェアしました。そして、チャウンシーがマットに衝撃を与えた方法で、他の人も刺激しようとしました。
マットは、計画を実行した
マットは、自分のこのFacebookの投稿が注目を集め、チャウンシーと母親への寄付に繋がることを望んでいました。マットは、その投稿に”GoFundMe”のリンクも添えて、人々が簡単に寄付できるようにしました。このページには、チャウンシーの服と靴のサイズや、ブラック一家の生活状態について語るビデオインタビューなどが含まれていました。
その投稿を見た人は、すぐにチャウンシーとマットのやる気に、心を打たれました。そして、その気持ちは、GoFundMeのページでの金銭的援助に繋がったのです。GoFundMeとは、アメリカのクラウドファンディングサービスです。
そのお金をどう使う?
GoFundMeは、すぐに多くの人にシェアされ、順調に寄付金が集められて行きました。その状況にマットとチャウンシーは、喜びを隠せませんでした。そして、彼らはこのお金をどう使うのかについて、計画を立て始めました。
マットは、少年が夏場に芝刈りでお金を稼ぐことができるように、芝刈り機が必要だと考えました。彼が次の年に進学する前には、ある程度のお金を貯めることができていました。
寄付はされ続けた
マットのFacebookの投稿は、さらに多くの注目を集め続けました。まったくの見知らぬ人が、食べ物、衣類、歯科治療、さらには仕事など、あらゆる種類のものをチャウンシーに提供し始めたのです。 この時点で、マットのFacebook投稿は、14,000回シェアされ、3,500ものコメントが寄せられました。
マットは、GoFundMeの目標額を上げるべきだと考え始めました。 大学への進学や新しい家を手に入れだけの資金が溜まるかもしれないのに、芝刈り機にこだわる必要はあるでしょうか?
一体、どれくらいのお金が集まったのでしょうか?
この投稿には、いいねやシェアがたくさん集まったことはわかりましたが、実際にどれくらいの金額が寄付されたのでしょうか?最終的に、ブラック一家には、340,000ドル(日本円で約3,645万円)ともなるお金が溜まりました。母親のバーバラは、天にも登るような気持ちでした。障害者手当てでチャウンシーを育ててきたシングマザーとして、このお金は、彼女の人生を変えのに、十分でした。
バーバラは、「チャウンシーには、できる限りのことをしました。そして、過去数年間、彼は一生懸命、私の世話をしてくれました。彼は、とてもいい子で、彼にこれ以上を求めることは、私にはできませんでした。」と語ります。
マットはある活動を発足
マットは、GoFundMeのページを”Chauncy's Chance”と呼ぶ、もっと大きな活動に変えました。そして、この働きはすぐに主要ニュースの話題となり、多くの人がチャウンシーの名前を知ることとなりました。
この事についてチャウンシーは、ピープル誌に「信じられない。僕の人生は、完全に変わりました。今、誰にも気づかれずに外出するのは、かなり難しい状況にあります。彼らは、僕を見つけると、”ああ!チャウンシーだよね?」と話しかけてきます。僕は、”うん、そうだよ”と答えながら、とても幸せで嬉しい気持ちになります。」と語りました。
有名なことが常に良い事とは限らない
ニュース報道は、チャウンシーを実名で報道したわけではありませんでしたが、彼の近所の多くの人は、彼が多額のお金を持っていることを知っていました。 チャウンシーは、あまり治安の良い地域に住んでいるわけではなかったので、ブラック一家は、常に注意を払う必要がありました。
チャウンシーは、「僕の親戚は、お金を手にいれた事実を知ると、助けてもらえると思ったみたいで、会社の支払いを手伝って欲しいなどと、お金を目当てに連絡をとって来ることが多くなりました。」と述べました。
お金を管理する必要があった
340,000ドルというお金は、一度に受け取るのには、かなりの大金です。 マットとチャウンシーは、ブラック一家が、きちんとお金を管理して使えるようにしてあげたかったのです。
マットは、弁護士を雇う必要があると勧めました。「これは、彼らが税金として払う金額を最小限に抑えるためです。これによって、見知らぬ人から、とやかく言われることを避けることができます。」
マットのモチベーション
マットが忙しく自分のことをしながらも、この家族を助ける時間がどこにあったのか、疑問に思っているとしたら、それはあなただけではありません。一人の人が、自分の枠を超えて人を助けるというのは、なかなかできることではありません。マットは、熱心なキリスト教信者であり、彼のこのブラック一家を助けるという行為は、自分自身ではなく、神が彼らを見守っていたからだと話します。
マットは、彼らを助けるための仲介役をかってでたことで、多くの力を発揮し、たくさんの人から感謝されました。しかし、マットは「全ての事柄には、神が与えてくれた意味がある」と述べました。
新たな行動を促す
マットのおかげでチャウンシーは、一生に一度のチャンスを得ることが出来ました。しかし、マットは、「僕がしたことをただ称賛するのではなく、あなたも外に目を向けて見るべきです。誰かの人生を変える方法は、そこにたくさんあります。」と強く主張します。
「私は、特に何かしたわけでもなければ、私がしたことに焦点を与えるべきでもありません。私は、ただこの話を自分なりに解釈し、インターネット上に投稿しただけです。そして、それをメンフィス市のコミュニティが取り上げてくれたので、多くの人の目に触れることになったのです。」とマットは語りました。
チャウンシーとバーバラは、マットに強く感謝した
マットは、チャウンシーに起こったことは、全て神が見ていたからだと信じているが、ブラック一家は、マットがこの計画を実行してくれたからだと信じている。
「彼は、私たちが今まで会った中で、一番の良い人だ」とチャウンシーは言いました。「誰も彼がしてくれたことほど、私たち家族を気にかけてくれる人はいませんでした。彼は、私たち家族の一員です。」とバーバラも続けました。また、彼らは寄付や物資を支援してくれた全ての人に深く感謝していると語っています。
マットには、これが最初の善行ではなかった
マット・ホワイトは、常に誰かのために良いことをする習慣がありました。 慈善活動は彼の性格の一種なのです。 彼のFacebookページには、困っている子供たちを助けることに人生を捧げた証拠がたくさん残っています。 チャリティープロジェクトに直接関与していない場合でも、彼のFacebookページでは、他の人が行ったチャリティーの成功事例を共有しています。
マットは、ソーシャルメディアをいかに効率的に使用するか、そのノウハウを知っていました。さらに、GoFundMeを使用したのは、今回の件が初めてではなかったのです。
マットのこれまで
マットは、数年前にGoFundMeのアカウントを目の見えない空き缶集めをしていた男性の為に開設しました。 マットは、メンフィスの治安の悪い地域で、偶然この男性に出会ったのです。この男性の名前はJB・キブラーといい、彼は娘や孫娘を食べさせるために、ゴミ箱を掘って空き缶を探していました。
マットがJB・キブラーの為に開設したGoFundMeは、最終的に36,000ドル(約386万円)をもたらしました。 そのお金はJBと彼の家族に大きな変化をもたらしました。
メンフィスをより良い環境に
メンフィス大学の貧困調査報告書によると、2017年現在、メンフィスはアメリカのすべての大都市の中でも、最も貧困地帯です。 その中でも、アフリカ系アメリカ人コミュニティの貧困率はさらに高くなっています。
その貧困調査報告書を作成したメンフィス大学の教授であるエレナ・デラベガ博士は、貧困率は、最低賃金の価格設定と輸送問題が大きな原因であり、その他にも、多くの要因が重なって起きていることだと述べました。
前向きに世界を変えよう
子どもたちは、都市が抱える貧困の問題の矢面に立つ存在です。 デラベガ博士は、「この貧困率の高さが何を意味するのか、人々に考えてみて欲しいのは、街で子供が通りを歩いているのを見たとき、その子供が貧困状態にあるかどうかは、ほぼ50:50のチャンスだということです。 」と述べました。
この統計の結果には、言いようのない虚無感が押し寄せますが、マットのような人々は、どうにかこの現状を変えて行こうとしています。私たち全員が協力すれば、その大きな変化は起こせるかもしれないのです。
インターネットの良いところ
GoFundMeは、支援を目的としたオンラインの募金ツールです。 これは、人々がオンラインで何か重要な目的を果たすために、迅速かつ効率的に資金を調達する方法で、アメリカでは近年注目されています。このサイトの運営会社は、すべての寄付額から5%と、手数料として2.9%を差し引きます。 この会社もなんとかしてお金を稼がなければなりません。
GoFundMeは営利目的の取り組みですが、大勢の人々から、短い時間でお金を集めたい人には非常に便利なツールです。 マットは、このGoFundMeを使用して、彼が成し遂げたことを改めて確認することができます。